14//鮮烈な痛み



「………、……??」


何がどうなって今の状況になってしまったのか、混乱する頭には回想する冷静さもない。とにかく「何で?」しか浮かばない。

地べたに座り込んだその人の腕の中、まさに掻き抱かれていると云えるこの体勢。
その人の膝の上に頭だけを抱えられ、子供をあやすように髪を撫でられている。…まるで自分が相手の腰に腕を伸ばして、離れまいと抱き付いているみたいだ。

赤の瞳が瞬きを繰り返しているうちに、漸く頭が回転し始めた。…状況を理解して…、

「な、なにを…!何してんですか!?離して下さい!」
「駄目」
「なっ」
「だってシンの目、まだ赤かったから」
「これは生まれつきです!」
「…本当に?」

思わずぐっと息が詰まった。

「ね、シン」
「…何ですか…」
「まだたった18年だよ。何もかもに絶望して嘆くにも幸せを諦めるにも、まだ早すぎる」
「…、…俺はまだ、16年しか生きてません」
「…そっか。16年だったか」

そう云えば、そうだったね。
だったら、もっとだねと言葉は続いた。

そうだよ。
俺はまだ、あんたほど長く生きてない。
けれどきっと、自分の16年とこの人の18年には、大人と子供ぐらいの差があるんじゃないかと思う。

たかが2年。
されど2年。

『まだたった……』

誰に対して言いたかった言葉だ。それは。


「…あんたは」
「ん?」
「あんたは、痛過ぎんだよ」
「はは…そうかもね。歳も近い君に対して、ホント、僕は何をしてるんだろ」

けど、この腕を離す気はないんだろ。

それに、俺が言いたい意味とは違うっての。


「………。……いいよ、もう」
「シン?」
「俺の目が赤くなくなるまで、なんだろ」


返事はなく、ただ、笑うような気配と……力の抜けた重みだけが、伝わってきた。



視界の隅に映る携帯電話。
永遠に同じ言葉を繰り返すだけの無機物。

赤い軍服。
白の軍服。

ホントにあんたは、いたいひとだよ……。

でもその痛みは、今は少しだけ暖かいから別にいいかと……シンは静かに眼を閉じた。



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