当たり前に植物を恵み、育む地球とは違って、ここは月の大地。
整えられた常緑樹は遊歩道に植えられているけれど、こんなにも木々で覆われたその場所は珍しかった。


そして、彼らの秘密の場所はそこにあった。


滅多に人の出入りのない、少し薄暗い林の中。
入り口はそうであっても、奥まった木の密集地の中央には、不思議と円形に刳り貫かれた空が見えていた。

陽光を惜しみなく独り占めするその場所には、然程大きくない湖のようなものがある。
そしてその中央には、一本の巨木が、まるでこの地の長のように佇んでいた。



………それは桜の木だった。



年齢が定かではないほどに成長したその桜木は、毎年、見るものを魅了する爛漫の桜雪を降らせるのだ。

今現在、その姿を見ることが出来るのは、そこを自分たちの宝物のように遊び場とする二人の少年たちだけ。

秘密の遊び場で、二人は最高の景色を手に入れて、日々を幸福に過ごしていた。



春には絵のように美しく舞う桜。

夏には眩しい緑と太陽の陽差し。

秋には周囲の林の纏う紅葉の錦。

冬には降り積もった純白の雪景色。



例え造られた季節の魅力であっても、ここにこうしてある大地の息吹。

四季を余すところなく魅せてくれるその場所は、二人だけの至高の楽園だった。









そこを見付けたのは、つい数ヶ月前。

見た目によらずわんぱくで好奇心旺盛なキラが、あまり人の立ち入ることがないこの林の入り口を見つけたのが始まり。
幼心の好奇心と怖いもの知らずの感情が、キラとアスラン、二人をこの奥へと導いた。


偶然の産物でも、ここは二人だけしか知らない秘密の場所。

それ以来、二人は毎日の多くをここで過ごし、輝かんばかりの笑顔で日々を過ごしていた。

造られたなんて思いたくもないくらい、美しい四季の流れを、だからこそ、感じたかった。
この楽園で。





…―――――永遠を。











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