ある日のクライン邸。
今後の作業計画を練っていた四人は、一段落付いた時間になって休憩を入れた。
「つっかれたー」
「何か持ってこようか」
大きく伸びをするディアッカに、キラはパソコンを一度閉じてから三人に目を向けた。
「甘いものならあるよ」
「いや、俺はいい…」
「俺も結構だ」
「あ。俺は貰う」
手を上げるディアッカとは反対に、甘いものが苦手なアスランとイザークは首を振った。
ならコーヒーだけでも出すかと、キラは立ち上がってキッチンに消えた。
戻って来たキラの手元には、トレーに乗せられた四つ分のコーヒーと、紅茶の香りのするクッキー。
「はい、どうぞ」
「おー、………このクッキー美味いな」
「紅茶葉入りなんだよ。甘さ控えめ」
「へぇ。ならお前らでも食べられんじゃねーの?」
いらない、という言葉が揃って返ってくる。コーヒーだけで満足そうにして、カップ口元に運んでいた。まぁやっぱりな。
「形悪くてごめんね」
「ん?何で?」
「僕が作ったから。それ」
はにかみながら、皿に乗ったクッキーを指差した。ラクスが沢山紅茶を貰ってきたから、何かに使えないかなって思ってさ。
「へぇ…凄いな」
なんてディアッカが呟いた時だった。
横から、突然手が伸びて、ぱちくりしているディアッカの前で二人はクッキーを口にし始めた。
「…お前ら…食わないんじゃねぇの?」
「甘さ控えめなら食える」
イザークが呟きながらコーヒーをすすり、アスランは何も言わずにクッキーを口にしていた。
甘いものが苦手だと宣言している二人は、実際の味がどうであれ、スイーツの形を成しているものには基本的に手を出さない。
………ハズなのだが。
「………」
「おいしい?」
「ああ」
「悪くない」
呆れるディアッカの横で、キラだけがにこにこと嬉しそうに二人を眺めるのだった。