「キラ、お前いつの間に模擬戦のレコードを塗り替えたんだ?」

見るともなしに見た模擬戦のランキング。
そのトップの記録がいつの間にか更新され、人物名は親友の名前になっていた。

すると、僅かばかり気落ちしたようにキラが呟く。

「アレ…僕が登録したんじゃないよ…」
「…?…どういうことだ?」
「知らない間に、誰かが勝手に登録したんだと思う…」

自分は一切関与していないのだと、キラは語る。

「しかもあの記録って、僕が機体の整備の時に仮の形でシミュレートしたものなだけで、正式に残したワケじゃないんだ」

いつの間にランクインしてたんだろう。
自己記録は間違いないが、公開することを了承した覚えはなく、勝手に刻まれていた己のIDと名前に唖然としたらしい。

奇妙な出来事に、キラは眉を寄せていた。

「確かにお前は、そういう競った記録を残すのは好きじゃないもんな」
「うん…。戦いがメインの部隊に配属されてるワケじゃないし…」

目立つのは本意ではないから、余程のことがない限りデータとしては残さない。人の目に触れることは極力避ける。
だからこそ、こんな最上位で注目を浴びる行為を見付けて、アスランは首を傾げたのだ。

世間とは逆説的な意味で落ち込むキラだったが、しかしアスランには、今回のこの所行に込められた気持ちが、何となく理解出来るような気がした。

「多分、整備班の誰かが、悔し紛れに登録したんだろうな」
「どういうこと?」
「軍の花形であるMS部隊の人間からしてみたら、裏方の整備班や技術班を自分達より下に見る傾向がないとは言えないし…ほんの一部だろうけど」
「……ああ…」
「だから、実力がありながら影みたいにお前が扱われてることが、そいつにとっては我慢できなかったんだろう」

事実、キラの実力を知ってる俺達からしてみても、たまに悔しくなることがある。
アスランの呟きに、キラは瞬いた。

「…そうなの?」
「親友が下に見られて、何とも思わないわけないだろ」
「………、…そっか…。……へへ」

キラは頬を染め、幼い頃と同じ笑い方ではにかんだ。

「僕も、周りにお前は凄いって言われるより、アスランにそう言って褒めて貰えるのが一番嬉しい」
「………褒めてたか?」
「そういう照れ隠しなアスランだから、遠回しにでも認めて貰えると、…嬉しい。…そういうトコも……好きだけど」

はは、と笑うキラはとても幸せそうだったから。アスランも頬をを熱くして目を逸らし…思わず浮かんだ言葉に自嘲した。


…俺も、お前が俺の一言で笑ってくれるこの一瞬が、一番好きだよ。


大人の恥ずかしさで言葉に出来ないそれの代わりに、アスランはキラの頭を乱暴に撫で回した。



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