アスランは最近、確かに忙しかった。
まともに部屋に帰って眠ることも出来なかったし、食事も片手間のながら食い。
何故こんなにもスケジュールが立て込んでいるんだとイライラしてみても、理由など「そういう時期だから」としか言いようが無い。…結局のところ、誰のせいでもなかった。
だから、久しぶりの親友とのランチは、ささやかな合間の一息付ける時間だった。
……なのだが。
「キラ…、お前そんなに食べるの遅かったか?」
「え」
目を丸くするキラのトレイには、まだ半分もランチが残っていた。
アスランの方はとっくに終わり、食後のコーヒーカップを手にしている。
「もしかして、…もう行かなきゃならない時間?」
「いや、この昼休みが終わるまでは、まだ大丈夫だ」
「そっか。…なら、多少時間がかかってもいいよね」
ほっとしたようにへにゃりと笑い、キラは食事を再開した。…遅いとは言わないが、心なしかゆっくりしているように見える。
「そんなに時間をかけて食べるようなメニューか?」
「…まぁ、…確かにそうなんだけど…」
「俺には、やけにのんびり食べているように見えるんだが」
好物をじっくりと味わっているのとも違う。
今日も変わらない食堂のランチメニューだ。
一方的に喋りに夢中になっていたわけでも、聞き役でフォークだけを動かしていたわけでもない。
不思議そうな顔をするアスランに、キラは少しだけ拗ねたような表情をして、
「だって…ごはんの時ぐらいしかゆっくりできないじゃないか…」
「は…?」
「僕が食べ終わるまでは、一緒にいてくれるでしょ」
最近、全然一緒の時間取れないから…。
尻すぼみに声のトーンを落としながら、キラはぷいと視線を逸らした。
「…え…?…なんだって…?」
「〜〜だからっ!ちょっとでも時間稼ぎしたいじゃないか!」
不機嫌と恥ずかしさを半々にして叫ぶキラの顔は真っ赤だった。
そして開き直ったように再び食事を再開したキラに、アスランの方こそカップ片手に固まってしまうのだった。