でん!
と主張するように置かれたマイディスクの上のちんまりとした鉢。
掌に載るくらい小さなサイズなのに存在感があるのは、書類まみれで荒れた机のど真ん中に、場違いな緑を見たためか。
「……………」
ディアッカは沈黙した。
珍しく……自分で言うのも何だが……真面目に業務に取り掛かろうとした矢先のことである。…気持ちが萎えた。
「あ、それ可愛いでしょ」
ディアッカの後ろからやってキラに、何とも言えない表情を向ける。
「コレ、お前の仕業」
どんどんと声のトーンが落ちていった。淡々としたような、意味がわからんと呆れたような。
「ディアッカにあげようと思って、置いといたんだ」
小粒サイズのソレを示して、キラはにこりと笑う。
「なんで」
「この前、ひまわりの花を沢山くれたでしょ。だからそのお礼」
…―――――花の礼に花を。
…うん。確かに礼儀にかなってるね。
分かる分かる。
ありがたいね。
でも、
「なんでサボテンなのかな」
誰に言ってもそういうだろうよ間違いなく。
「ふつーもっと花っぽい花っていうかさ…」
「だって、これならディアッカでも枯らさないでしょ」
「は?」
「せっかくあげたのにゴミにされちゃうのも嫌だったし」
小動物を覗き込むような愛でる眼になって、キラはちょいちょいと茶色いプラスチック性ミニ鉢をつつく。
「この前もらったひまわり、今でもドライフラワーにして飾ってあるんだ。だから、同じくらいディアッカも大事にしてくれたらなー…って思って」
「………」
「こんなに小さくても、ちゃんと生きてるんだよ?」
ディアッカはぽりぽりと頭を掻いた。
ひょいと手のひらにソレを載せ、
「………、……うん。…まぁ。…なら、もらっとく」
ちんまりとした半ドーム型の、トゲ付き緑の塊に目を合わせ、こくりとディアッカ頷いた。まるで眼が付いていて、その視線が合わさったような気がする。
このちっささ、丸み、なんだか愛嬌があるように見えてきて、うん、いい感じかもな、と何故かしきりに頷きたくなった。
「枯らさないでね」
「おー」
キラの照れたような小さな微笑に、ディアッカも笑った。
…―――――そして数週間後。
「キラ!あのサボテンに花が咲いたぜ!」
「………、……まじで?」
ホント、運には恵まれた友人だ!