「キラ。お前最近、あいつらにばかり構いすぎじゃないか?」
「あいつら?」
「シンやレイ達だ」
「んー…そうかな。…確かに一緒の時間は増えた気がするけど…」

きょとんとするキラの姿に、自覚はないのかとアスランは溜め息を付きたくなった。

そう。この頃は、目に見えて彼らと一緒にいる時間が増した。
アスラン達といても、かっさらうように横から誰かがキラを連れて行く。内容も業務や技術に関してのアドバイスを求めるものだから咎める理由もない。

ましてや…キラは、後輩達に弱い。甘い。

可愛くて仕方がない。そう言わんばかりに表情が緩む。やさしくなる。

「お前は指導教官でもあるんだから…」
「贔屓するなんて馬鹿な真似、僕がすると思ってる?」

組織的立場として注意を促そうとしたら、不機嫌になったキラに一刀両断された。
私情が入ってないとは言えないから、アスランは言葉に詰まる。

「悪かった…」
「もう…どうかしたの?…イザークにも似たようなこと言われたんだけど」
「イザークが?」
「うん。それでディアッカには、羨ましい限りだねぇなんて嫌みっぽいこと言われた」

本当、分かんない。そう眉を寄せている。
だろうよ。そうだろうな。厄介だとアスランは何度目かの溜め息を付きかけた。

その時。

「キラさーん!」

来た。
一瞬にしてアスランの機嫌と目付きが氷点下に下がる。それを隠しもせずに、尻尾を千切れんばかりに振ってやって来たその後輩を睨んだ。

「何の用だ」
「あ?」

剣呑な視線がぶつかり合う。

「俺はキラさんに用があんの。引っ込んでろデコ」
「先輩に向かって何だその態度は」
「無駄に年上なだけだろ」
「実力もはるかに上だが?」
「ああもう。会ってすぐに喧嘩をしない!」

シンは未だ噛み付くような視線を送ってくるが、キラに「それで何の用なの?」と言われてぱっと表情を変えた。飼い主に頭を撫でられ尻尾を振るワンコへと。

「技術班の教官が探してました!メンテナンスを手伝って欲しいみたいで」
「わざわざ呼びに来てくれたの?…ありがとう」

いいえ!シンは満面の笑みで胸を張った。
どうせ頼まれもしないのに、自分から請け負ったのだろう。お前はリードをくわえて玄関で散歩を待つ犬か。

「早く行きましょうよ。教官のところまで案内します」
「うん。…じゃあまたね、アスラン」
「…ああ」

キラの肩越し、見えたそいつの視線は想像通りの勝ち誇った目付きだった。この前みたいに小馬鹿に舌まで出しそうな。

二人が角を曲がるまで見送ったアスランは、自分以外他に誰もいないことを承知で盛大な舌打ちをした。

年下後輩という立場は、時に不利で、時に最大の武器になる。
どうやらそれに気付いてしまった後輩達に、先輩としてどう勝負していくかを考え、アスランは仲間達の元に向かった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -