地球にあるクライン家の別荘。
その軒下には、毎年ツバメが巣を作るのだという。雨風を凌げるその場所は、絶好の住み処のようだった。
「やっぱり今年も作ってる」
ほら見て。キラは指差した。
休暇で訪れていた別荘で、「珍しいものが見られるよ」と案内されたのが、それだった。
屋根と壁の隙間に、幾重にも重なった枝が見える。時々細い尻尾が見え隠れしていて、今は親鳥も巣にいるらしい。
「毎年同じ場所に作るみたいだな」
「安全な場所だって分かってるみたい」
頭いいなぁ、なんて呟いて、肩に乗るトリィを振り返る。
「家を借りてるお礼とか、今度してくれるかな?」
冗談めかして笑えば、『トリィ?』と首を傾げている。さすがのトリィも、よく分からないらしい。アスランは気を抜くように笑いながら、キラを促した。
「だといいな。…ほら、そろそろ行こう」
「うん」
そう言って二人が歩き出そうとしたら、肩に乗っていたトリィが翼を広げ飛び立っていった。そして、巣から顔を出していた親ツバメもまた。
二匹は空で旋回し、やがて連れ合うように、共に飛んでいった。
バサッ、という音に、室内にいたキラとアスランは顔を上げた。
「あ、トリィ戻って来たんだ」
開け放された窓からするりと入り込んで、二人の間にあるテーブルに止まる。そしてくわえていた何かをぽとりと置いた。
「ん?」
一輪の、濃い紫の花。
星のように綺麗な五枚の花びらを広げた花。
なんだろう?と首を傾げるキラに、この花の意味を悟ったアスランは笑った。
「良かったな。トリィとあのツバメからのお礼だ」
ホント?貰っていいの?なんてトリィに話しかけながら花を手にし、キラもまた微笑む。
「何の花だろ。コレ」
「調べてみるか」
アスランはパソコンを開く。
キラはそれに寄り添い、画面を覗き込む。
トリィはキラの頭にぽてりと乗っかり、二人の傍でただ、二人の笑顔を見守った。