「それ、どうしたんですか…?」
半ば茫然としながら、シンはキラの顔を指差した。
「ん?…眼鏡」
「見りゃ分かります」
そうじゃなくて。
キラは別に、目が悪いわけではない。
案の定、別に度は入ってないよ、と返って来る。伊達眼鏡ってヤツ?と呟き笑ったキラに、シンは鼓動が跳ねた。
ヤバイ。カッコいい。
いかにもインテリ然とした、白いワイシャツとその眼鏡の組み合わせに、シンの動悸は跳ね上がる。
ぽー…っとキラを見詰めていたら、
「今日、新人の教育を任されちゃってさ。少しでも威厳を出そうと思って」
「新人…」
「そう。とは言っても、僕よりも歳上の人も多いから」
そこでやっと、シンはハッと我に返った。
「こんな若造に〜…とか思われたら嫌だから、少しでも大人っぽい格好をしようかと思」
「外して下さい!ダメだろ!絶対!!」
意味不明な台詞を吐いて、シンは興奮した視線を送った。キラが目を丸くする。
軍服とは違う背格好。見慣れない知的な姿。
すっと伸びた背筋とその清廉な立ち姿に、近付きたいと願う人間は多い。
当のキラは、シンの拒否に不満そうに口を尖らせ、年相応に頬を膨らませているが、一度作業に没頭し、集中する姿は、まさに人の目を釘付けにする魅力を放つ。
「なんでダメ?」
「なんでも!」
「どうしても?」
「どうしても!!」
「えー…」
「そんなの無くっても、キラさんの名前だけで充分アイツらは付いてくるから!」
それもそれでムカつくんだけど!それ以上取り巻きを増やすのは断固阻止してやる!と、シンはキラから眼鏡を取り上げた。
何気に気に入ってたのか、キラはしょんぼりと肩を落としていた。それを横に見ながら、シンはグッと拳を握る。
これ以上ライバルを増やしてたまるか!