「あ…空が白んできた」

徹夜明けの帰り道。
キラが示した東の空は、言葉通り紺色の空が薄くなり始めていた。

「イザークも今日は休みだよね?」
「ああ。今日の業務は引き継いで来た」

昨日の警備責任者が自分であった為の、仕事明け。交代の引き継ぎを終え帰途に付こうとした時、「夢中になり過ぎてこんな時間になってた」とくたびれた様子で格納庫から出てきたキラと、偶然鉢合わせた。

空が青と薄水色のグラデーションに変化を始める中を、二人は宿舎に向かって歩き出す。

徹夜した身体はだるさを訴えてくるけれど、この空気に気持ちは不思議とすっきり頭を冴えさせる。
微かに混ざる潮風も、気分を白く穏やかにさせる理由になるのかもしれない。

「この時間ってさ、眠いけど空気が澄んでて気持ちいいよね」

同じことを感じとったキラが、大きく伸びをした。そうだな、とイザークも頷く。

夜が明け切る前の白の時間。漂白の時。
言葉通りの、白が漂う時間。

「ね、ちょっとだけ海まで出てみない?」
「…今からか?」
「この時間の海って、凄く空気が綺麗だと思うんだ。それに、朝陽も見られるよ」

世界にとっては始まりの時刻に、自分達は漸く一日の終わりを自覚する。
その中で、最後にちょっと楽しんでから帰ろうよ、とキラは笑う。

身と心をまっさらにする空の下、そうして一日の疲れを漂白し、新しく太陽が昇る様を見届けてから眠ろうと。

「ね。行こう?」
「海には入らないぞ」
「さすがにそこまで遊ぶ元気はありません」
「ならいいがな」

身体は重くても、今日は良い眠りに付けそうだ。
そう思いながら、イザークは微かに笑った。



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