パソコンと。友達と。青空。
それさえあれば、何もいらない。
何も望まない。
紫の瞳は、青空に飛翔していった鳥を追いかけた。
やがてその眼に平和な都市の風景が映り、耳には友人達の自分を呼ぶ声が届く。
「キラ!」
「ここにいたのか。…って、何この量!」
「教授に、これもやってみないかって次々渡されちゃって」
「お前断れない性格だもんな。しかも教授のお気に入りだし」
「…そうかな」
青空の下で、友人の声を聞きながら、得意のプログラムをパソコンで打つ。
それが、僕の日常。毎日の風景。
「最近彼女とはどうなんだよ」
「いつも通りだけど?」
「なーにすました顔してんだよ!学園のマドンナ掴まえといて、そんな余裕ねーだろうが!」
「美人だもんね。ライバル多そう」
「な!キラもそう思うよな!」
「ちょっとあんたたちー、キラの作業の邪魔してんじゃないわよー」
それ以外は、何もいらない。
それ以上は、何も望まない。
だから。
「ん?これって地球か?…戦争真っ只中なんだな…」
「あっちはかなり、酷いらしいわよ」
「ふーん。でもここは中立だから、戦争なんて関係ないよな」
「…そうだね」
「むしろ俺には、来週からの試験の方が戦争だっつーの」
………だから。
「教授に呼ばれてるし、そろそろ行こうぜ」
「うん。そうだね…行こうか」
「あーあ。試験がどかっと無くなるような事件でも起きないかな〜」
「下らない愚痴言ってないで、あんたは勉強しなさい!」
青空は遠く、白い雲が棚引き始め。
友人達はワイワイと騒ぎながら、遠ざかる。
パソコンを閉じれば、遠い星のニュースは途切れて消えた。
見上げた彼方に、鳥はいない。
「ん?どうした、キラ?」
「…いや。何でもないよ」
手で持てる大きさのノートパソコンと。
他愛もなく馬鹿げた冗談を言い合う友達と。
温度の変わらない蒼に包まれ生きている今。
きっと、一番の幸福で、不変であることを切に願うもの。
だから、どうか。
どうか―――――目覚めさせないで。
ヘリオポリス新型MS奪取作戦まで、残り、