キラは、目の端に金色がちらつく度に眉を寄せた。
作業中だろうが、休憩中だろうが、ただ廊下を歩いているだけの時だって、ところ構わずに。
その色は酷く際立って視界に混ざる。
場所も物も人ですら、気紛れに付き合い、現れ、拘りなく去っていく。
フワフワふわふわ風にまかせ、あちらこちらへふらふら漂う。ニョキニョキにょきにょき何処にでも出没してくる目立つ色。
元気な挨拶。笑顔の会話。明るい笑い声。
何処にいても、視界の片隅に入り込む黄色頭。
「じゃあまたな〜」
知り合いとの去り際、ひらひらと愛想良く手を振る姿と声に、キラの眉がぴくりと動く。
機器類の影になっているため、キラの姿は見えていないらしい。鼻唄なんぞ歌いながらこちらに近付いてくる。
「………」
何となくな胸のムカつきそのままに…、キラは足元のコードを引っ掛けてやった。
「!?…のわっ!!」
受け身が取れず、盛大に顔面からぶつかっていった情けない姿に、少しだけ溜飲を下げた。
「いって…、て…キラぁ?…お前何すんの?」
「ちゃんと足元見て歩きなよ。あと周りも」
「はぁ?…つか、お前わざと…」
派手な音と派手な叫び声に、さっきまでディアッカと話をしていた人達が何事かと近寄ってくるのが見えた。
それに「平気平気」とディアッカは手を振り、にへらと笑う。
「問題ないから。そんな心配してくんなくてもだいじょー…ぐえっ」
言葉半ばのディアッカの襟を、今度も思いっきり引いてやった。間抜けな声が再び響く。
「一体なんなんだよ!」
「もっと髪が長ければ、そっちを引っ張ってやるのに…」
小さく舌打ちをする。
その目立つ頭が苛々の元なんだ。
不本意そうにハテナマークを飛ばすディアッカに、キラは鼻を鳴らした。
「愛想振りまいてないで、たまには一つの場所に落ち着けば?」
「はぁ?」
「ふらふら目の前を横切られてばかりいると、鬱陶しいんだけど」
つん、と顔を背ける。
そのキラの態度に、暫し目を瞬いていたディアッカだったが…、…やがてにやりと笑った。
「なに?ヤキモチ?」
キラは、何かがぴきりと音を立てたのを自覚した。
足元に散らばる、先端の繋がっていないコードの一つを手に取り、ディアッカへ向けてみせ。
…―――にっこりと。満面の笑顔で。
「その目障りな頭も髪も思考回路も、一緒にショートさせてあげようか」
いい加減、一つ処に留まっていて貰おうか?
2013/01/16 20:49