「これ!あげますっ!」
声が裏返りながら、シンはキラに向かって握り拳を突き付けた。恥ずかしさで真っ赤になった顔が上げられない。
「…?…なに?」
片手を出したキラの手のひらに、シンはそれをぽとりと落とした。
…可愛い花柄の指輪だった。
「………、……これを僕に付けろって…?」
「あ、いや!ルナがいらなくなったからあげるって言って俺にくれて…っ!」
「…処分品回し…?」
「ち、ちが…!そうじゃなくて!似合う人の方がいいかなって…!」
「にあう…?…花柄が…僕に?」
どんどん間違った方向に進み出した会話に、シンのぐるぐる具合も頂点だった。つまり、パニック寸前。「上手くやりなさいよ!」と背を押してくれた幼馴染みの「情けない…」と呆れる顔が浮かぶようだった。
「この仕事にアクセサリーは厳禁なんだけど…特に指輪とかはアウトだし」
「!!!」
まさしく頭を叩かれたような衝撃。
分かりやすくすると、『ガーン!!』である。
ふら…と立ち去りかけたシンに、しかしキラは笑った。
「でも可愛いから気に入ったよ。ストラップにでもして身に付ける、って使い方でもいい?」
こくこくこく!とシンは無言で何度も頷いた。
「ありがとう。大事にするよ」
思いのほか嬉しそうに笑い返してくれた姿に、シンはほんわりした気持ちを感じて心にガッツポーズを決めた。
そして、「当たって砕けろ青少年!」と親指を立てて送り出してくれた幼馴染みに、感謝の叫びを送ったのだった。
2013/01/12 00:17