「―――彼女を救うこと、俺は諦めません」

深夜の静かな空の下で、シンは宣言した。



昼に繰り広げられた戦闘。

その戦場で、シンは一人の少女と対峙した。

哀れな宿命を背負わされた、笑顔の幼い少女だった。妹に重ね合わせ、守りたいと願った。
だが、力不足か不運の連鎖か、あの悪夢のような戦禍から、今日まで彼女を救い出すことは出来ずにいる。

キラは、そんなシンの気持ちを知っていた。
シンも、キラに自分の決意を知っていて貰いたかった。だから、誓うように宣言したのだ。


…―――諦めたくは、ないのだと。


キラは優しい眼になってシンに微笑みかけた。

「彼女もきっと、シンのその強さに惹かれたんだね」

赤面してしまった。

「守ってあげたくなるような、そんな可愛い女の子だったもんね」
「…!」

その台詞にシンは焦った。

「キラさんはステラみたいな子が好みなんですか!?…やっぱりああいう線の細いタイプがいいとか…!」
「あはは。心配しなくてもシンから取ったりはしないよ」
「う…いや、…そういう意味じゃなくて…」

相変わらずのキラの天然振りと鈍感振りだ。
守ってやりたいという思いはステラに強く感じるが、一緒に歩いていきたいと願うのはキラ・ヤマトという人間だけだった。

キラさんの鈍さには、もう諦めの境地だけど。

それも魅力なのだと言ってしまえばそれまで。
シンはささやかに溜め息を付いて、少しだけ張っていた力を抜いた。
宣言を伝えて、楽になった気がした。


二人、石段に並んで座り、静寂に包まれた夜に思いを馳せる。


「ステラ……星、か…」

キラが呟く。
見上げた夜空には、見慣れない星座の渦。

こうしてキラと二人、とりとめもなく話していられる幸福。ささやかな温もり。
世界にただ怯えるしかないあの少女にも、この優しさを分けてやりたかった。


「…シン。強くなりなよ」


ぽつ、と横顔のまま呟かれた言葉に、シンは噛み締めるように頷いた。

「はい。そうして必ず、ステラを救い出す」

星の瞬きに覚悟を誓う。
言霊は力に変わる。

「うん。…強くなれ、シン」

その横顔は、楽しそうに…嬉しそうに、小さな微笑を刻んでいた。


「僕よりももっと…―――ずっと、強く」


それが、貴方の願いなら。
自分は、誰よりも強くなれる気がした。

2013/07/15 18:02
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