「あー…てんごくー…」

心底幸せだと息を吐き出したキラに、

「いい加減出てって下さいよ!」

シンの叫びがかぶさった。





冬。寒い季節。紛れもなくシンの部屋である。

そこには、ふわふわ毛布に覆われた四本足の座卓テーブルが鎮座していた。

…俗に云う、コタツである。


シンの部屋にコタツがあると小耳に挟んだキラは、持ち主の留守中に勝手にロックを解除し、侵入した。しかも、噂に聞いたコタツの必須アイテムの数々を、いそいそと持ち込んで。

外出から戻ってきたシンが見たものは、自分の部屋のど真ん中でコタツに潜り込み、ぬくぬくと幸せそうに微睡むキラの姿だった。

「ずるいぞシン。こんな素敵アイテムを持ってて隠してるなんて」

目が合った瞬間呟かれたのは、そんな口を尖らせた恨み言。

呆気に取られていたシンが我に返って叫んだ時には、最早根を生やしたようにキラは動かなくなっていた。



「出ーてーけーよ!!」

叫んでも耳に入らない。
ふぬー!と引っ張ってもムダ。
コタツをずらしてもぴったり付いてくる。

「はーなーれーろー!!」
「僕はしばらくコタツムリ化させて頂きます」
「誰が上手いこと言えって言ったんだよっ!」

動け寝るな居座るな!!
お気に入りの寝床を見付けた冬眠間近の動物のように、べったり貼り付いて離れやしない。

「僕はコタツと結婚する。ずっと一緒にいる」

「一生添い遂げるー」なんて呟きながら、滑らかなコタツの板に頬をすり寄せていた。

「ここは俺の部屋!人の迷惑考えろっ!!」
「……そうだ…」

キラはむくりと上半身を起こした。

やっと分かってくれたか…、とシンがホッとしたのも束の間、


「アスランたちも呼ぼう…」


ごそごそとポケットから取り出した端末に素早く何かを打ち込み、再びキラはコタツの巣へと潜っていった。





数時間後。
人口密度の増した室内で更に面倒なトラブルが起こるのだが、それはまた別のお話。





――――――――――

ほら、オーブのモデルは日本だから…。

2013/03/15 19:31
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