夏の夜だった。
団扇片手に夜空を仰いでいたら、不意に鳴ったインターホン。
その音に誘われドアを開けた先にいたのは、顔馴染みの後輩。俯いたまま表情は見えない。
陽もとっぷり暮れた今の時間。常識で考えるなら普通、他人の家を訪問すべき時刻ではない。
けれどキラは、その姿がそこにあることを不思議には思わなかった。
「今日は一体どうしたの」
やれやれと笑いながら溜め息一つ。
沈黙したまま顔すら上げない後輩だけれど。
「入っていいよ」という言葉に逆らうこともなく、素直にドアの内側に滑り込んで来た姿に、またキラは笑い、
「…話、聞いてあげるから」
パタン、と閉じられた扉の向こうに、声は消えていった。
2013/02/16 00:51