某月―――その最後の日。
アスランは、届けられた手紙の封を切った。
今の時代には随分とレトロに思われるシンプルな封筒には、一枚の写真と便箋が入っていた。
深い夜色の空に浮かぶ、一面の星々の写真。
便箋には、送り主の近況が短く書かれているだけの、寂しい中身。
しかしアスランは、毎月末に恒例となったこの手紙に、ふ…と優しく笑った。
全てが終わり、しがらみから解き放たれた親友は、地球へと降りた。
そして、色んな空が見たいと語ったあいつは、場所を変え、季節を変え、沢山の『星』の風景を見付けて親友へと送ってくる。
過去…―――悲しい想いで空を見上げるしか出来なかった彼は今、誰よりも自由に、地球での放浪のような旅を楽しんでいる。
今回のこれは、何処からだろうか。
孤島の海岸?砂漠?北の永久凍土?
まるで謎かけを解くように、封筒を開いた時、一番最初に考えるのはその写真の撮影場所だった。そして手紙の最後に、小さく正解が書かれているのもまた、いつものことだった。
「遺跡…?」
地球で最も星に近付いた都市―――その栄枯が残る高山遺跡。
人間の歴史と繁栄、滅亡を思いながら、親友はきっと空を見上げたのだろう。
アスランは、写真を手にしたまま立ち上がる。
そして、壁に貼られたカレンダーを今月もまた一枚めくり、新しい月を用意した。…その隣。
既に沢山の風景に埋め尽くされているコルクボードに、その新たな写真を加えて。
2013/01/31 03:13