薄暗い備品庫の中。
ごそごそと棚を探り、降ろし、入れ替えながら動く人影が複数あった。
その中の一人であるキラは、表情と身体全体で不満げなオーラを発していた。
「もう…、僕は無実じゃないか…」
ディアッカがイザークの前で余計なこと言わなければさぁ…ブツブツと文句を言うキラに、
「いやいやいや。今回の騒動の罰なんだから、お前が根源だろ」
聞き捨てならんと、しゃがみ込んでいた足元から立ち上がったディアッカが反論すれば、キラはムッとした態度で振り返った。
「折れてダメになったチョークの代わりを持ってこいって言われたんだよ?その原因はディアッカじゃないか!」
「ついでに備品庫の整理と掃除もしとけって言われたんだろーが!」
「なんで関係のない掃除までやんなきゃなんないんだよ〜」
「どう考えてもあのハッキングに怒り爆発した結果だろ。あの騒ぎで手が回らなくなった教室の掃除まで追加されたんだから」
「あのまま帰っちゃっても問題ない雰囲気だったのに!」
「お前ら、無駄口よりも手を動かせ」
一人冷静に溜め息を付いて棚を整理するアスランに、キラとディアッカはカチンと来た。
「そもそも最後にアスランがイザークを煽らなければさぁ…」
「ああそうだよな!実は!」
「知るか。あいつが勝手に喧嘩を吹っ掛けて来ただけだ」
「僕達、アスランとイザークに巻き込まれただけじゃん」
「そーだそーだ!アイツの怒りの八つ当たりに巻き込まれたの俺達じゃんか!」
「一番巻き込まれてんの俺なんですけど!!」
耐えきれなくなり、シンは大声で怒鳴った。
肺活量の限界で叫んだせいか、ぜーぜーと呼吸が整わない。
なのに、当人達はきょとんと瞬きをしているだけである。
「ん?…シン、なんでそんなに疲れてんの?」
「その割には大して仕事進んでなくね?」
「これも追加だ」
補充用のチョークとコピー用紙、掃除用の小さなモップをドサリと乗せられ、その埃っぽさにシンは咳き込んだ。
涙目になりながら「なんで俺ここにいんだろ…」と涙声までもが混じりそうな風情である。
シンは普通に廊下を歩いていただけだ。…だけなのに。
突然やって来た先輩達に両腕を掴まれ、問答無用で引き摺られて行った。キレた生徒会長に罰を与えられたらしい三人によって。
「もうやだ…帰りたい…」
また言い合いを始めた三人に口を挟めるスキルは、今のシンには皆無なのであった。