「あ、良かった。二人ともいた」
フリールームで雑談をしていたイザークとディアッカの所に、キラがやって来た。
よいしょ、と二人に隣り合う間に座り、愛用のノートパソコンをカタンと開いた。
そのままキーボードを叩き始める。
「こんなところで仕事始めんの?」
「うん。終わってないんだ」
「まぁ、別にいいが。…俺達に用があったんじゃないのか?」
「んー…今日はなんか二人の側にいたい気分なんだよね」
はた、と二人の動きが止まった。
最初にフリーズから抜け出したディアッカは、嬉しそうにニヤけながらキラの頭をかき混ぜた。
「なんだー?今日はエラく素直だなー」
「そう?」
二人とは対照的に、叩く手を止めることもなく視線も合わせず、キラは首を傾げた。
慣れない言葉に漸く動き始めたイザークは、お決まりのように眉間に皺を刻んで(照れ隠し)、キラに問い掛ける。
「…仕事が煮詰まってるのか…?」
「いや?…なんかさ、最近暑いし雨続きで湿気が凄いじゃない?一人で部屋にいると、空気がジメジメしてきて嫌だったんだよね」
…意味が分からない。
答えになっていない答えを返して来るから、二人は目を合わせて頭を捻った。
そしてさらっとキラは口にした。
「ディアッカは太陽みたいにからっと湿気飛ばしてくれそうだったし、イザークは近くにいるだけで何か涼しそうだったから」
「……………」
「……………」
お前にとって俺達はエアコンなのか?…という疑問は、当然ながらキラには届くことはない。
「シンとレイもそんなかなーと思ったんだけど、やっぱ二人には敵わないよね」
何が?
快適快適♪と上機嫌で鼻歌まで歌い出したキラに、二人の疑問は永遠に届くことはなかった。