朽葉色の木の葉が音を鳴らし、吹き抜けた風にカサカサと散り落ちていった。
やがては風に吹き上げられ、花びらと共に屋根の向こうへと消えていく。
晩春の庭。
八重桜が散る処。
「最後の桜だね」
立ち止まって彼方を見詰めるキラに、アスランも風の向かう先を見た。
「もう葉桜か」
「うん。もう辺りは緑の景色だ」
たわわに実った果実のような、花提灯のぼんぼりのような、丸く身を寄せ合い咲いていた春の終わりの八重の桜も、もう緑。
葉と共にサラサラと、空の向こうへと吸い込まれるような姿に、最後の桜の花びらが舞う。
「…もう、春も終わりだね…」
さようなら。優しい春の日。
また来年、会う日まで。