「行け!トリィ!」

アスランの腕から飛び立った緑色の鳥は、夜の空に遠く羽ばたいていった。

「どうなるかな?楽しみだね」
「そうだな。というか、よく思い付いたな」
「歩いてるだけでもこんなに綺麗なんだし。トリィの目から見たら、もっと凄いかなーってさ」

夜の川沿い。
美しく盛りの夜桜をライトアップした遊歩道を、キラとアスラン、二人は歩く。
時折、川向こうのぼんやりと照らされ浮かぶ桜も楽しみながら。

夜になっても消えない明かりの渦の中、淡く輝く夜桜の群れ。
川にも映えて、幻想とした風景を作り出している。


だから、これを空から見ることが出来たらと。傍らに止まるそのコに【瞳】を託し、空に放った。

景色を、世界を、いつもその【瞳】に映していたように。今、夜の色に美しく広がる風景を、眺めているのだろう。そのおこぼれに、少しだけあやかろうと思う。


「見てよ、川に舟が浮かんでる。あれも夜桜見物の人かな?」
「そうだろう。贅沢だな」
「アスランなら出来るんじゃない?…なんたって高官の息子…」
「そんな接待みたいな真似してまで行きたくはない」
「ふぅん。勿体ない」
「俺はキラと桜が見られればそれでいい」
「………」
「それとも乗ってみたいのか?」
「…んーん。…僕もアスランと見られれば、それで充分」


まだ少し肌寒い夜に、二人のように景色を楽しみに来た人々とすれ違う。

笑い声。
はしゃく声。

それを遠目に見ながら、キラは微笑む。


「でも、皆で騒ぐのも好きだから、今度は沢山誘って遊ぼうね」
「酔っ払いの宴会場と化すんじゃないか?」
「それも春の楽しみ方じゃない?」

楽しみだなぁ。

キラとアスラン。
二人で笑い合って歩き出す。


………でも、今はまだ。



二人だけの、夜桜を。

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