「大丈夫かなぁ…」
「どうした?」
夜。
窓から暗い外を眺めたままぼんやりと呟いたキラに、アスランは声を掛けた。
「桜。やっと咲き始めて、もうすぐ満開なのに」
ここのところ、風が強い日続いてるから。
散ってしまわないかと心配して溜め息を付いている。
「どうだろうな…。…なら明日、見に行ってみるか?」
「あ、付き合ってくれる?」
「ああ」
翌朝。
「わ、全然大丈夫だね。凄い」
「ほとんど落ちてないな」
多少は葉と一緒に地に落ちてしまったが、枝には盛りの花の色が広がっている。
「むしろ、昨日よりも花が咲いてる…」
風が暖かくなり、満開への足音が近付いていた。
「凄いね。……強いなぁ…」
盛りを終えた季節には、あんなに脆く儚くそよ風に散っていくのに。
その時を迎える前の桜は、人が怯えるほどの風にも負けず、あんなに小さな花びらを咲かせている。
強い風を受け止めて、逆らうことなく、しなやかにたわんでいたのだろう。
「来週には満開かな?…また来ようね、アスラン」
「そうだな」
小さな約束を背にして、二人は去っていく。
……振り返り、青空に揺れる木を視界に入れてふと思う。
風にさざめき笑うその姿。
その強さしなやかさ、まるで、