D.G-Dr ほかも | ナノ


▼ 04

「帰った」
「おかえりなさーい。先にお風呂入る?」
「あぁ。今日「は、お蕎麦じゃないですー」
「おい」
「だーめ。週末までは我慢して?」
「……チッ」
「舌打ちしないの!ほら、お風呂沸いてるから早く入ってきて!」

仏頂面の神田の背中をグイグイ押してリビングから追い出す。相変わらず蕎麦に煩い彼は未だに週二ペースで蕎麦を食べる。まぁ機嫌が悪い日でも蕎麦を出しておけばちゃんと食べてくれるっていうのは有難いことだけど。少しだけ、ほんの少しだけ、単純だなって心の中で呟くのは内緒の話。

「さてっと」

神田がお風呂から上がってくるまでにサラダとお吸い物を完成させてしまおう。そう意気込んで裾を捲くった途端、視界の端から程良い筋肉のついた腕が伸びてきて胸の下に回った。

「やっ!?」
「暴れんな」

カチンッ、とコンロのガスを切られ現状を把握する。

「だっ、ダメダメダメ!折角焼きたての鱈が食べれると思ったのに…!」
「んなもん後で温めりゃいいだろ」
「だめだって!焼きたてがおいしいんだって!」
「ゴチャゴチャうるせー」
「かん――っ」

後ろ向きに抱かれたと思えば簡単にクルリと回転させられ触れる唇。逃げようともがけばもがくほどに、キスに慣れた神田の体が邪魔をする。
そうこうしている間に息が苦しくなって、肩で呼吸する頃には大人しく神田に抱きあげられて洗面所へと連行されていた。



「……鱈」
「冷めたって食べれんだろ」
「…焼きたてが食べたかったんだもん」
「温めりゃいいじゃねぇか」
「やだ」
「なんでだよ」
「だって…焼きたてを神田に食べてほしかったんだもん」
「……」
「……」

神田に後ろから抱かれた状態で湯船に浸かる。もしこの湯船が一人でも厳しいくらい小さな湯船だったら、神田もこんなことはしなかっただろう。
こういう時だけ快適素敵なマンションを提供してくれたコムイさんを恨めしく思う。

「いつまでむくれてんだよ」
「……横暴」
「丸い顔がさらに丸くなってんぞ」
「意地悪」
「どうとでも言え」
「ワガママ王子……でも、」

こうして神田と入るお風呂は、嫌いじゃない。もう少しだけこちらの事情を知ってほしかっただけ。
天の邪鬼はわたしもか。

「だいすきだよ、ユウ」
「……バーカ」

そんなバカの言う「大好き」が満更でもないくせに。
なんて思いながらこれから降ってくるだろう甘いキスに意識を切り替える。

突然明日、離れ離れになるかもしれない。そんな恐怖を抱かせないよう命一杯愛してくれる彼に、今はゆっくり抱かれていよう。

そして明日も言うんだ。


ユウ、だいすきだよって

 

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