▼ ずっと、このまま
『−−え?』
「だからね、マネ辞めることにしたんだっ」
気丈に振舞おうとする電話越しの声は
悔し涙を噛みしめた声がした。
いつも通りの寝顔。今にも動きそうな寝顔なのに。
触れた頬の冷たさに現実を突きつけられる。
試合後、先生の制止を無視して全員が息を切らして病室に走った。
一番最初に木兎さんが扉を開けてその脇を俺はすり抜けありすのベッドへと走った。
「ありす!!!ありすッ!!!!!」
肩を揺する。
まだ温かい気がした。
それでも目を覚まさないありすに涙で視界が滲む俺は名前を呼ぶしか出来なかった。
マネ2人の声がやけに響いた。
みんながありすの名前を呼んでいた。
その奥で先生がありすのおばさんと担当医に頭を下げていて、
俺は現実を知った。
絶対、行こうねっ
あのオレンジコートに立つみんなを見るまでは
わたしも負けないからっ
そう強気に笑うありすが本当は一人で泣いてたの、俺、知ってたんだ。
だから約束した。
どこに居ても、俺達は繋がってるって。
その証って。
チーム全員の小指に描かれた赤い輪っか。
それを聞いたありすが「なんか運命の赤い糸みたいっ」とはにかんだから、俺とありすだけそこに付け足してリボン結びの絵にした。
顔を赤くしながらも喜ぶありすに俺が守るんだって思ったのはたった3日前のことだ。
「……ありす」
−− なぁに?京ちゃん −−
「俺、ありすが彼女でよかったって思うよ」
−− やだ……なぁに?急に… −−
「だからまた逢えたら今度は、」
−− ……。 −−
「この指に本物の指輪、贈るから」
−− うん…… −−
「待って、てッ」
−− はいっ! −−