D.G-Dr ほかも | ナノ


▼ むぎゅっとひとつに。

「−−好きだ。ずっと前から、ありすのことが好きだ」

突然の思いがけない、幼馴染からの告白。

「リン、ちゃん」
「たとえお前が他の男を好きだとしても諦めらんねぇ。俺はお前が「ちょっストップ!」

今度は慌ててリンちゃんの口を右手で塞ぐ。

「誰が誰を好きだって?」
「だから俺がお前を」
「そ、そっちじゃなくて!わたしが、誰を好きだって?!」
「はぁ?!んなモンこっちが知りたいに決まってんだろ!?」
「い、言っときますけどっわたしまだ初恋の最中なんだからね?!」
「はぁあぁぁぁッ??! おまっ、いまっそれっ俺の前で言うか!?」
「だって、わたしの初恋リンちゃんだもん!!」
「リンちゃんってどこのドイつ…ッ」

怒りよりも驚きが振り切れて固まっちゃったリンちゃんにもう一度繰り返す。

「わたしの初恋、リンちゃん、だもん…」

二回目の言葉が漸く怒り心頭だったリンちゃんの頭まで届いて、次第に首元まで真っ赤になっていくリンちゃん。

「それ、本当、か…?」
「…リンちゃんに嘘つかないもん」
「いや、でも……じゃあ、なんで“黒”?」
「黒?」
「…水着」
「……あぁ!だってオーストラリアから帰ってきてからのリンちゃんってば黒の服ばっかだし。ジャージも黒で水着も黒でしょ?ずーっと黒、身につけてるからよっぽど黒が好きになったのかなぁって」

「それに黒だとちょっとは体型カバーできるかなぁ、なんて思ったりも」と言いながらも浅はかな考えだったなぁとあの頃の自分を反省。

「つまり俺の早とちり…?」
「うん」
「勘違い?」
「そうだね」
「俺、今」
「告白しちゃったね」

きっとこれが漫画だったらシュボンッとリンちゃんから湯気が出ていることだろう。

「……ねぇリンちゃん。本当にわたしでいいの?」

今まで一度もリンちゃんに告白しようとしなかったのはいくらリンちゃんの傍にいてもリンちゃんを取り巻く周りの女子がブサイクなわたしに安心して無視してくれていたからだ。でも恋人になるとそうはいかない。だからずっと考えてた。

もし万が一にもリンちゃんの彼女になれるなら。その時は恥じない自分でいようと。デブスなりにメイクも頑張って、背伸びいっぱいのオシャレして、アスリート街道まっしぐらでストイックな癖にロマンを妥協せず夢へと突き進む彼と少しでも釣り合うように。

「わたしで、大丈夫?」

好きだと言ってもらえたことは嬉しかった。でもあんなの子供染みた嫉妬だ、と言われてしまえばわたしはきっと立ち上がれない。だからお願い。もう一度

「言ったろ。ずっと前から好きだって。…オーストラリアに言って壁とブチ当たって。何度も水泳止めようと思った。その度、お前から届く手紙に励まされた。親でも家族でもない、赤の他人のありすの応援だけが唯一心から信じられる励ましの言葉だった。国を超えた応援なんて簡単に出来やしない。ありすをオリンピックに連れていく為にも俺は泳ぎきってやるんだ、そう何度も自分を奮い立たせてここまできた。
好きだ。ありすが好きだ」

真剣な眼差しに体が熱くなる。今までのわたしが少しずつ報われる感覚がした。努力は無駄じゃなかった。

「わたしも、リンちゃんが好きです」

目尻に溜めた涙を一生懸命堪える姿に「泣かせちゃった」って笑えば「泣いてねぇ!」と目をゴシゴシするリンちゃんにまた笑いが込み上げてきて。
結局2人して一頻り笑いあってから、仕切り直しに降ってきたキスはなんとも甘酸っぱい味がした。


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