▼ 熟れたスイカだって命懸け
「先輩、スイカ割りしましょう!」
「もう始まってますから!」と意気込む後輩に引きずられ連れてこられた寮前ではすでに興奮した部活のメンバーがやいやい野次を飛ばし、その中心にはビキニ姿に目隠しのありすが竹刀を持って地面のスイカとの間合いをとっていた。
「は!?あんの、バカッ!」
「松岡先輩!?危ないですよ!?」
危ないと止められても自分の大事な女が別の意味で危ない目にあっているんだ、んなこといってられっかと内心毒吐いてオレは輪の中心を目指し野郎の体を押しのけ進む。
「オイ!テメェ、いい加減にしろよ!つか、なんだよそのk」
格好、と言い切る間もなく尖った風がヒュンッと吹いて髪がふわりとそよぐ。
ワンテンポ遅れてバコンッ!と聞こえた音の方へ目をやるとオレの真横で粉々に砕け散った無残なスイカ。
ヒヤリと冷たい汗が背筋を伝う。さっきまで興奮していた男子の声は一瞬の沈黙を味わったあと鬨の声となって学園に響いた。
「ふぅ。あれ?凛、そんなところで何してるの?」
「……それはオレのセリフだ」
「え?」
オレの声が聞こえていなかったのか、もしくは聞こえていても分かっていないフリをしているのか。
どちらにせよ、盛り上がる男子に向かってドヤ顔で決めポーズをとっている目の前の女が自分の彼女だと思うと大事なところが萎んだ気がして自分の不甲斐なさと彼女の男子力に眩暈がした。
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決して暑さのせいとかそんな言い訳したくないけど男前な彼女を守るのはいつだって命懸け