【治癒能力】

足元にごろりと転がる肉片を敵目掛けて蹴り上げた、一瞬出来た隙を逃さず剣を振り下ろす
昨日までは奴隷市場で一緒だった男達だった、名前は知らない

「…」
同じ貴族に落札された奴隷は屋敷の広間で殺し合いを命じられ、暇を持て余した貴族達の酒の肴に


「奴隷になったばかりで生き残るとはな…お前名前は何だった」
「…キョウヤ」

戦闘経験などないキョウヤは攻撃を喰らっては回復を繰り返し、渡された長剣を適当に振り回した…能力の乱発により力尽きる奴隷達は勝手に潰れていき、対した疲労感もないまま最後の一人になっていた


「褒美をやるぞ、ほら床に転がってるソレらで汚れただろ」
「うっわ…高そう、こんなの受け取れない」
「自己再生に特化した治癒能力者か…面白い。お前はこれから私の懐刀になれ」
「戦闘奴隷って事?」
「医者になるのは諦めろ、他人を治す力には恵まれなかったようだからな」


新品のスーツに身を包み、主人の後ろをついて回る
随分と気に入られたものだ、中には満足に食事を与えられない奴隷もいた


「マスター…」
「どうした、空腹か?お前には十分に餌をやってるつもりだが…」
「いや、何だろ…俺って餌分の需要あんのかなってさ」
「勿論だ、言ってなかったが私は持病が有ってな…番犬が必要だった」


見つけた見つけた
主人の隙


「へぇ…なぁ、じゃあ治癒試してみていいか?ちょっとは人にも使えるようになったと思うんだ」
「そうか、じゃあ寝室の鍵を渡しておこうか」

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「おいおい、もしかして雌経験あんの?がっかりだわ…」
両手を頭上で固定して弱った身体を揺さぶった、震える肩…涙が伝う頬…威厳とやらは何処へやら

「お綺麗な身体を見下してた奴隷に汚される気分はどうよ、ご主人様…」
「貴様…」
「まぁ、朝になったらアンタも俺らとおんなじなんだけど…」


国を変えて開かれた奴隷市場、元主人の男が愛玩奴隷として落札される姿を商人の叔父の隣で見送った




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