【探し物】
「可愛いね、この子」
少女は無邪気に笑っていた。両親が死に知り合い貴族の娘のマナー講師として買われて四年目、初めて会った時は首も座らぬ赤子は成長し、今少しずつ言葉を覚え始めたばかり聞き間違いではないかと耳を疑った
「お嬢様…その子が怖くないのですか?昨日も貴女様より大きな子を食べてしまったのですよ?」
「それはあの子がこの子に意地悪したのよ、石を投げてたの私見たわ。それに私にはすりよってくる、だから私この子が大好き」
召喚士にとって召喚獣は自分…否定され続けた自分を主人は全て受け入れてくれる。彼女の為に死のう、リヒトは心の中で誓った
誓いを立ててからひと月、少女の姉に押し切られ婚約をした。正直彼女を愛してはいなかったが自分がこの屋敷で買われる際既に決まっていたこと…主人と共にあれるのなら彼女を愛そう
「リヒトは私のお兄様になるの?嬉しいな、本当の家族になれるんだ」
「お嬢様…」
「 でいいよ、リヒトお兄様…これからもずっと一緒に…ね?約束よ」
昨日まで笑っていた、隣にいたんだ…一体何があったのだろうか
「今日から貴方わたくしの執事になるのよ、あぁそうだ…その汚らしい獣はしまっておいてよ?貴女はただの飾りなんだから…」
俺の主人は姫だけだ
「おやすみなさいお嬢様」
世間知らずの主人達は直接手を下さずとも勝手に壊れていった、飢えた獣が夢中に貪る姿を静かに眺めた
否定した獣に喰われるなんて、あの世でさぞ悔しがっていることだろう
姫…待っていてください、例えこの身が砕けようとも必ず貴女を見つけだす
なんて
本当は分かっていた、でも信じたくなかった…彼女は既にこの世には存在しない。記憶がないあの夜…儚くも散ってしまったのだから
「姫…貴女はもう、何処にもいないのですね」
何度も馬で駆けた思い出の湖に彼女の好きな花を流した