近距離だけど遠くて


元気にしてるか?
余裕ある時は顔出せよ

忙しかった一年なんて過ぎてしまえばほんの一瞬だったように思えてくる
初めはガキのお守りなんて御免だと嫌々始めた期間限定プランだった筈さ

「雷人さん、そろそろ本番ですよ」
「あぁ…悪いな今行く」

チカとユニット組んでからスケジュールは鮨詰めと言っていいだろう、何ヶ月とオフがない日が続いた。

元々歌手になりたくて身一つで乗り出して来た訳で、自分の好きな事を仕事に出来てる事が何よりも誇らしい

「主演されるドラマの魅力を教えてください」
「そうですね…」
好きな事だけで食べていくというのは理想であり現実は厳しい。曲と言っても何でもその時の思い付きで発表すればいい訳ではない、流れがある…
俺はドラマや映画の仕事が右肩上がりに増えていた、新曲を何よりファンが聞きやすいだろうと…歌えるきっかけが何が何でも欲しかった

ただ新曲発表は音楽番組だけではない、モデルの仕事もバラエティー番組もある。その二つはチカも一緒時が多い

「雷人さんってば楽屋でも新曲の話ばかりなんですよ〜」
「俺は音楽馬鹿だからな」
隣で無邪気に笑うチカと司会者と共演者…最近このお決まりのパターンが出来上がってしまっている

「この前譲とライヤと…という店で…」
楽しそうなオフの写真が中央カメラに映る楽しそうにじゃれる可愛い後輩達、当然俺は此処には居ない。

俺は何をしているんだ?
「雷人君はプライベート何かありますか?」
「そうですね…ドラマの撮影が終わったらどこか旅行にでも行きたいですね、こいつと…俺を誘ってくれないつれない後輩二人と」
隣に座るチカの小さな手を握り、雛壇に座る二人を見て笑った

わざわざどうしてるか聞く程遠くもなく、手を伸ばせば届くこの距離



自分は寂しいのだと気付くのに一年の半分を費やした
お前達の眩しい笑顔で俺を満たしてくれ




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