* 不規則な心音 | ナノ



「入りなさい」
「えええ」
「…紅茶、で良いですか」
「入ります」


ランスに連れられてやって来たのは彼の自室だった。昨日の今日で足を踏入れることに少しだけ躊躇したのだけれど、辺りを見回しても誰もいないようだし、紅茶も飲みたいしなぁ。
…まあ、いいか。


「お邪魔しまーす」
「どうぞ」
「あ、今日はロイヤルミルクティーがいいな」
「分かりました、座って待ってて下さい」


団服のままのランスがキッチンに立ちお鍋を用意しているのは何とも奇妙な光景だけど、こんなランスを知ってるのって私だけなのかな。
な、なーんて!いやいや、そんな筈ないよね、きっと!


「ナマエ」
「は、ははい!」
「…私を見ながら百面相するのは止めて下さい、気持ち悪い」
「べっつに!ラ、ランスなんて見てないし!絶対に見てないんだからね!自意識過剰!!」
「そうですか」
「ちょ、笑わないでよ!本当にランスのことなんて、ちっとも考えてなんて…」
「そう言えば、頂いたクッキーがあるのですが」
「嘘ウソ、私本当はずっとランスのこと考えてたよ!」
「ええ、分かってますよ」


ニッコリと微笑んでクッキーとミルクティーをテーブルに置いたランスは、椅子を引いて私に座ることを促した。
どうしてだろう、今日はやけに優しい。


「………で?」
「ん?」


暖かいミルクティーを口に含み至福の時に浸っていると、目の前に座ったランスが口角を上げて小首を傾げてきた。…目が笑ってないのは、何故でしょう。


「ラムダと、親しげに…何を話していたんです」
「…し、仕事の話ですよ?」
「成る程、自分の持ち場を離れてラムダと仕事の話ですか。…あんなに密着してねぇ」
「あれは色々あってラムダ様が…、別に私だって好きで、くっついてた訳じゃないし」


苛々した様子で指をトントントンとリズミカルにテーブルに叩き付けるランスに思わず語尾が小さくなる。
何というか、こんなに本気で不機嫌なランスは久しぶりでどう対処して良いのか分からない。

…せめて、怒っている理由だけでもハッキリさせないと。


「仕事、無断で遅れて…」
「違います」
「は」
「それは別に良いんです」
「えええ、じゃあ…」


ランスが怒るようなこと、何かあったっけ。と先程の出来事を振り返ってみてもこれといって思い当たるものもなく頭を捻る。
…けど、まさかとは思うが…いやそんなことは有り得ないって思ってるけど…


「ランス」
「なんです」
「わ、私とラムダ様がくっついてて嫉妬しちゃったんでしょー!このお茶目さ…」
「何だ」
「…は?」


「馬鹿だから、気付いていないのかと思っていました」


驚いたようにそう言ったランスはクッキーを片手に固まっていて、一方で私はそんな彼の発言と態度に視界が真っ白になった。


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