* 不規則な心音 | ナノ


「ね、眠い…」
「しゃきしゃき働きなさい」
「鬼め」
「さて、これが終わったらお茶にしましょうか」
「イエス・サー」


時計の針が九時を回った頃、ぐでぐでとペンを走らすナマエの隣で最後の書類を待っていた。
あと一枚、これさえ終われば仕事も終わりだというのに何をモタモタとしているのだろうか。しかし発破を掛けると見違えたように背筋をピンと伸ばしてペンを動かす。
お茶につられるなんて嘆かわしい。


「終わったー!」
「ヤドンを見ているようでした」
「うるさいなぁ、私デスクワーク苦手なの知ってるくせに」
「仕事ですよ、苦手とか得意とかは関係ありません。…クビになりたいのか」
「……はい、すみませんでした」


書き終えたばかりの書類にザッと目を通して確認する、ナマエのことだからと少し心配したのだけれど…まあこれなら大丈夫でしょう。
そして先程から捨てられた子犬のような目で訴え掛けてくるナマエにぐるりと向き直った。


「部屋、行きますか」
「はーい!」


何故かナマエは私の淹れる紅茶を美味しいと言って部屋にマグカップ持参で押し掛けてくることが多々ある。
その度に追い返しているのだけれど、今回は最近の頑張りを認めて許してあげましょう、丁度ケーキもあることだし。


「お邪魔しまーす」
「散らかさないで下さいね」
「善処するね」
「言ってる側からソファで跳ねない…!」


不満そうに口を突き出すナマエにリモコンを持たせてテレビを付ける。これで暫くは大人しくしているでしょう。

新聞のテレビ欄とにらめっこしているナマエを尻目に手早く私服に着替え、冷蔵庫を開ける。


ラムダが持ってきたケーキが二つ、残っていた筈だ。巷で有名なケーキ屋の名前の入った箱を開くとチョコとチーズの二種類。ナマエはきっとチーズだろう。


「ナマエ、チョコとチーズはどちらが良いですか」
「チーズー」
「わかりました」


皿に移したケーキをトレイに乗せて、湯を入れたやかんを火にかけた。今日はアールグレイにしよう。


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