* 不規則な心音 | ナノ

「ランスー、ちょっとちょっと!」
「なんです、今忙しいんですよ」
「いいから話聞いてよ」


すぐ終わるから、と両手を顔の前で合わせて必死に頼み込んでくるナマエに余程大事な用事でもあるのかと、大きく溜め息を吐いて向き直る。
すると、パッと笑顔になった彼女は後ろに隠し持っていたのだろう、菓子箱のようなものを机に乗せた。
…直ぐに終わりそうにないと思うのは私だけだろうか。


「これラムダ様から貰ったお煎餅の詰め合わせ、遠慮せずにどうぞ」
「全く…私は忙しいと言いましたよね」
「幼なじみが悩んでるって言うのにつれないなぁ」
「貴女が溜めた書類が今私に回って来ていると言うことが分かっていないようですね」
「うん、ごめんね」


しかし反省の色を見せたかと思うと、お茶発見!と机に置いてあった煎茶を勝手に啜り始めた。何故コイツはこんなに自由人なのでしょう、ポケモンの方が利口かもしれないと最近は本気で思うのですが。
…そしてそれは私の飲み掛けです。


「いい茶葉使ってるねぇ」
「貴女には無縁ですがね」
「言葉の暴力はダメだよ、上司は部下を慈しまなきゃ」
「しばきますよ」
「わー怖い、でも落ち着いてランス。私は早く本題に入りたいの」
「…殴ってもいいですか」


ケラケラと笑うナマエに疼く拳をやっとのこと抑え込む。腹いせに高級そうな煎茶を全部粉々に砕いてしまいましょうか。


「あ、このお煎餅落とした時に砕けちゃったのかな、後でご飯にふりかけなきゃ。」


――前言撤回、コイツにそんな地味な嫌がらせは通用しないことを忘れていました、もう減給しましょう。確定です。


「それで、話って何なんです」
「あー、あのね」
「一応言っておきますが、下らないことだった場合はそれなりの処置を取らせて頂きます」
「というと?」
「そうですね、取り敢えずこの山のような書類、片付けてもらいましょう」
「下らなくないし大丈夫だよ、ノープログラム!」


得意気に親指を突き立てるナマエを見て、早くこの場から消えてほしいと思った。そしてノープロブレムです、ノープログラムは貴女の頭の中でしょう。
救いようがないと言う言葉がここまで似合う人間は初めてです。


「…ちょっとさ、困ったことがあって」
「何です急に真面目な顔して」
「こんなことランスにしか相談出来ないんだけどさ」
「……ええ」


デスクワークはからっきしなナマエだけれど、無駄にバトルだけは強く外の仕事は彼女に任せてしまうことも多い。
仕事の話だろう、と安堵の息を吐いた。



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