酷く凶悪な目付きのアポロ様に部屋を追い出されてしまった私たちは、顔を見合わせて肩を竦めた。
…ありがとうアポロ様、貴方のお陰で少しだけ正常に戻れた気がします。
「目も頬も真っ赤ですね」
「誰のせいだと」
「自業自得でしょう」
「…おっしゃる通りで」
「でも、まぁ…可愛いですよ」
「デ…デレた…!!ランスがデレた!!」
「黙りなさい」
本当は再び活性化し始めた心臓をどうにかしようとふざけただけなのに、ランスに思いきり頭を叩かれた。
……ランスのデレは痛い。
「あ、仲直りしたのねぇ」
「アテナ様!!」
「…何故アテナが知ってるんです」
「だって、さっきナマエが死にそうな顔してランスのこと探し歩いてたんだもの、結構噂になってるわよぉ」
「うわー、私有名人だ」
誰に言うわけでもなくポツリとそう呟くと、私とランスを交互に見てにんまり笑ったアテナ様が、まるで悪戯っ子のように人差し指を口にあてる。
「今朝、貴女を呼び出した子たちがそれに便乗して変な噂を流してたから、あたくし、お仕置きしてきちゃった」
「へえ………ええ!?」
「そうですか、残念です」
「え、何が残念なの?ランス目が笑ってないよ!」
「いえ、私が直接教育し直してあげようかと思ったのですが…」
微笑み合う幹部二人に挟まれて、私が泣きそうになる。アテナ様にやられた女の子たちが無事であるよう、今は祈ることしか出来ないけれどランスは私が絶対に防ぐからね、と心の中で誓った。
「それじゃあね、あたくしアポロに用事かあるから」
「…アポロ様今ご立腹ですよ」
「あらあら、それは大変」
でも大丈夫よぉ、とやはりノックもせずに部屋へと入っていったアテナ様を見送る。
アテナ様って実は影の支配者なんじゃないか、と最近よく思う。
「ナマエ」
「なに?」
「そう言えば、同性の友達が出来ないと嘆いてましたね」
「…う、うるさい」
「教えてあげましょうか、友達が出来ない理由」
「え、私のコミュニケーション能力の低さじゃないの?」
「――私が、事前に釘を刺しておいたんですよ。」
……理解出来ない、いや、理解したくないだけなのかもしれないけど…。
この男は、今何て言ったんだろう。
「ワンモアプリーズ」
「私がナマエに近付いたらクビにするって、忠告しておいたんです。全ての女性の団員に」
「な、なんだって…!?」
「ああ、そう言えば小さい頃も、してましたね」
だから誰も私に話し掛けてもくれなかったし近付いたら逃げられたんだ…!!
何、何なのこの冷酷、嫌がらせのクオリティ高すぎる!なんて大規模!!
「ど、どうして…私昔から女の子の友達が欲しくて…人形相手に練習したりしてたのに…まさか…元凶が」
「理由知りたいですか?」
「それはもう凄く」
「だって、ナマエに友達なんて出来たら、私といる時間が減ってしまうでしょう」
「…えっと…」
「ナマエは異性より同性を優先しそうですから」
「同性の友達出来たことないからわかりませんがね」
「それに、私以上の異性なんて、なかなかいませんし。注意すべきはやはり同性でしょう」
微笑みながらそうハッキリと言い切った私の幼なじみ…今は恋人に、これも一応、歪みまくってるけど…愛の形なんだ。と思うことにした。
「部屋に戻りますか」
「仕事は?」
「ラムダに回しておきますよ」
「仕事と言えば、私決めたの」
「何をです」
「書類の誤字脱字を無くして提出期限は絶対に守ります!」
「…ナマエには無理でしょう」
「ひ、酷い」
「まあ、でも…」
少しは成長したみたいですね期待、してますよ
END
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