乱暴にドアを閉めて出ていってしまったランスは自己中な私のせいで酷く傷付いたに違いない。
そして、もう話し掛けても、笑い掛けてもくれないかもしれない。
さっき彼が見せた優しい笑顔を思い出して、ギュッと胸が痛んだ。罪悪感と、焦燥感、自己嫌悪。
早く追い掛けて謝らないと
でも拒否されたらどうするの?
―私も、ランスの気持ち、否定したじゃない。
少しだけ残っているミルクティーはもう冷たくなっていて、まるで今の私とランスみたいだなと思った。
「…あ、れ」
ゴシゴシと涙を拭いて、テーブルの隅に置いてあった紙を手に取る。
…やっぱりこれ、昨日書き終えた書類だ。
無理矢理ランスに残らされたんだけど、私が書き忘れていた書類なのに夜遅くまで一緒に残って手伝ってくれた。
「…私、字汚いなぁ」
見慣れた自分の文字の横に、昨日まではなかった細くて綺麗な字を見付ける。
…あ、付け足ししてくれたんだ。
見れば書類全部に誤字脱字と足らないことなどをチェックしてくれていて、締まりかけていた涙腺が再び緩んでしまう。
だって、こんな優しさ、知らなかった。
「あんな書類でよくアポロ様に怒られないと思ってたら、ランスが直してくれてたんだ…」
もう、許してもらえないかもしれない。元の関係になんて戻れないかもしれないけど。
――謝って、正直に自分の気持ちを、伝えよう。
冷たいミルクティーを飲み干して、部屋を後にした。
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