* 不規則な心音 | ナノ



「なあなあ、いい加減認めちまえって」
「何をです」
「ランスのこと、どっかで意識はしてんだろ?」


覗き見てくるタレ目にドキリとする。誰が誰を好きだって?私がランスを?有り得ない、だって私たち


「お、幼なじみだし」
「関係ねぇだろ」
「いや、でも」
「じゃあ何で今、俺のこと押し返してんだよ」
「こんなに密着されて嫌だと思うのは当然です。」
「へえ」


―なら、何でランスとは一緒に寝れるんだ?


「え、な、何で、知っているんです!?」
「知ってるも何も、オレはランスから聞いたんだぜぇ」
「はぁああ!?何人に言ってんのあの冷酷!いや、でもあれはランスが勝手に入り込んで来たって言うか…」
「…でも嫌じゃないんだろ、ランスが近付いても」


ぐっと詰め寄られて心臓が跳ねる。確かに、何で私ランスには平気なんだろう、いや…まさか、そんな筈あるわけ…


「私のことが好きなんでしょう?認めてしまいなさい」
「ひっ」
「ナマエ、」


耳元でランスの声が聞こえるが、ラムダ様だ、これはラムダ様の悪質な悪戯なんだ、そう理解していても何故だか顔に熱が集まってくる。
と言うかランスってこんな甘い声だった?違う、ランスはもっとこう絶対零度な…


「何をやっているんです」

そう、こんな声だ。
って……あ、れ


「ナマエから離れなさい、ラムダ」
「少しくらいいいじゃないですかランス」
「死にたいようですね」
「ランス物騒!ほらラムダ様もいい加減……乙女の尻を触るな!!」


穏やかになだめようとしている私を余程怒らせたかったのか、ニヤニヤと私のお尻を撫で回してきた命知らずなラムダ様に全力で肘鉄を喰らわせる。
まさか私が反撃するとは思っていなかったのか「うっ…!」と苦しそうな声を出してよろけたラムダ様から大きく三歩下がった。


しかし、予想外なことにそれとほぼ同じタイミングで、何故かカッと目を見開いた般若のように恐ろしい表情をしたランスが駆け、よろけるラムダ様に追い討ちを掛けるかのように

――回し蹴りをクリーンヒットさせたのだ。

その鮮やか且つ殺傷能力のずば抜けた蹴りと言ったらサワムラーもビックリだ。…と言うかランスの回し蹴り凶悪過ぎるんだけど…!!
え、ラムダ様何メートル吹っ飛んだ?


「痛て…お前ら二人して…少しはオジサンを労れよな」
「セクハラで訴えますよオジサン」
「ナマエ、ソレに近付くと加齢臭が移りますよ」
「げげっ」
「あ、嫌そうな顔すんなって…待てコラ…!!」


ツカツカとブーツを鳴らしながら近付いて来たランスに手を取られ、思いきり引っ張らた。


「ラムダ様はいいの?」
「ええ放っておきなさい、自業自得ですよ」
「…それもそうか」
「ほら、来なさい」
「おーい、俺にも手ェ貸してくれよー」


後ろから聞こえてくるラムダ様の情けない声に少しだけ同情してしまい、どうしようかと未だに手を離さずにズンズン進むランスを見上げれば、彼は私の言いたいとが分かったのか眉を顰めて小さく呟いた。


勝手にすればどうです

但し、私の手から離れることが出来たらの話ですが。

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