「このクッキー、美味しい」
「結構高いのよ、ソレ」
「…大切に食べます」
アテナ様が淹れてくれたコーヒーと甘いクッキーは、優しい味がしてとても美味しくて、これから紅茶担当はランスでコーヒーはアテナ様に御馳走してもらおう、なんて考えていたら向かいに座っているアテナ様と目があった。
「朝帰りなんてやるじゃない」
「…だから、お茶して気が付いたら朝になってたんですってば」
「へぇー」
「信じてませんね」
「嘘よ、ウソ。ランスってばナマエのこと、とても大切にしているもの」
「大切って…湯飲み投げつけたり暴言吐いたりすることでしたっけ…」
「あれは歪んでるからねぇ」
確かに、と二人で顔を見合わせてクスクス笑う。ランスの歪みっぷりは昔から変わらない、そんなランスと一緒にいたからか何故か自分まで奇人変人のレッテルを貼られてしまったのだけれど。
「それにしても、さっきみたいなことよくあるのぉ?」
「いや、今回が初めてでした」
「…あら意外、頻繁に呼び出されてるのかと思ってたわ。」
「かなりお怒りでしたもんね、…確かに何で今までなかったんだろう」
「ランスが牽制してたりして」
「いやいや、あのランスが仕事以外で人のためにそんなことするなん……」
そこまで言い掛けて思い出した、私、今日は非番じゃない!早く行かないとランスに締め上げられる…!!
ふわりと香るコーヒーを急いで流し込むと、きょとんとしているアテナ様に頭を下げた。
「っすみません、私仕事があったの忘れてました…!」
「あら大変ねぇ」
「今日は色々とありがとうございました、後日改めてお礼に伺いますので!」
「気にしないでいいのよ、お仕事頑張って、またいらっしゃいな」
ひらひらと手を振るアテナ様に見送られ、豬の如く廊下を走る。書類まだ残ってたんだ…!と言うかアテナ様は仕事しなくていいのかな。
「おっ、ナマエ」
「ラ、ラムダ様!」
「朝帰りとはやるじゃねぇか、とうとうくっついたか」
「朝っぱらから飲酒なんて関心しませんね、アポロ様に言いつけないと」
「おまっ、何言ってやがる!ただ若い二人を祝福して…」
「誰かー、酔っ払いがここにいますよー!退治して下さいー!」
「やめろ!冗談だから!また減給されちまう!」
ぎゃーぎゃーと煩い私たちをあからさまに避けて通る団員たちに気付き、廊下の隅に移動することにした。
これ以上あらぬ噂をたてられるのは私だって嫌だもの。
「ラムダ様、私仕事がありますので」
「まあ待て、もう少しくらい良いじゃねぇか」
「いやですー、私ラムダ様とお話してる暇なんてないんですー」
「なんだよランスに会いに行くのか」
「違いますよ!いや、まあ会いますけど仕事だし上司だし」
にたり、と厭らしく笑うとラムダ様が肩に手を回してきた。加齢臭が移るからやめて欲しいと思いながら然り気無く肩を押すと更に顔を近付けてくる。
…なにこのオジサン。
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