* 不規則な心音 | ナノ


「只今戻りましたー」
「あら、ナマエじゃない」
「アアアアテナ様…!!こんにちは、本日はお日柄も良く」
「貴女、本当に同性に弱いのねぇ」
「な、慣れてないんです!友達いないので!」


美しく笑うアテナ様に赤面しつつ、ナイスバディーな貴女だから余計に緊張するんだ!と心の中で叫ぶ。
と言うか何で同性を前にするとまともに喋れなくなることをアテナ様が知っているんだ!


「あら、その袋は?」
「本日の収入です!今日もバトル頑張りました!」
「女の子にそんなことさせるなんてアポロも酷いわねぇ、自分で戦えば良いのに」
「あ、それ私も思いました」
「ふふふ、それじゃあそう伝えとくわねぇ」


至極楽しそうに真っ赤な唇を三日月のように歪めるアテナ様にぞくりと背筋が凍る。まさか!そんなことされたら私のクビ飛んじゃう!昨日少ないお給料はたいてビーズクッションと加湿器買ったばかりなのに!


「そ、それだけは勘弁して下さい…私の生活費…」


「…ナマエの生活費なんて頼まなくてもランスが出してくれるでしょうに」
「いや、ランスは美青年の皮を被った鬼なので…私の生活費なんてとてもじゃないけど」
「あらぁ、まだくっついてなかったの?じれったいわねぇ」
「…くっつくって、何を勘違いしているのかは知りませんが、私たち只の幼なじみですよ」
「ふふふ」
「アテナ様絶対、何かとんでもない勘違いしてます」


ニヤニヤとからかうように笑うアテナ様が一瞬ラムダ様と被って見えた。この二人ってよく一緒に飲んでるし、性格的にも似てる気がする…どうしよう、私ラムダ様には逆らえてもアテナ様には逆らえない…!!


「それじゃあ、今度ゆっくりお茶でもしましょうねぇ」
「え、あ、はい!お疲れ様でした!」



ランスと仲良くねぇ、と独特の間延びした声が麗しい赤い髪と共に遠ざかって行くのを角を曲がって見えなくなるまで見送っていた私は、やはり今日はツイていないんだと深く肩を落としたのだった。
何でアテナ様はそんなとんでもない勘違いをしているのだろうか…、情報源は見付け次第潰してやろうと心に決めた。


「あ、噂をすればランスだ」
「噂って…一体どんな噂話をしていたんです、内容によってはその口縫い付けますよ」
「非番中に仕事押し付けられた部下にいう台詞がそれか、もっと労って下さいランスサマ」
「気持ち悪い」
「ほらね!すぐに毒吐く!やっぱりアテナ様は何か勘違いしているんだ!」
「…先程から何を言いたいのかサッパリ分からないのですが」



眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔をこれでもかと見せ付けてくるランスにも優しい私は一応教えておいてあげようと思った。
どうせコイツはまた嫌な顔をするんだろうな、精々噂話に苛々するが良い!


「なんかね、アテナ様に言われたんだけどランスと私が付き合ってるみたいな噂が流れてるらしいよ」
「……へぇ」
「聞こえなかった?もう一回言おうか?」
「聞こえましたよ、馬鹿にしないで下さい。」
「じゃあもっとリアクションとってよ!怒るとか不機嫌そうにするとか」
「何故です」
「は、何故って…」


別にいいでしょう

何か問題でもありますか?


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