* 恋は盲目 | ナノ


10-2


「ミズキちゃんが石好きだって分かった時、僕の事を名前で呼んでくれた時、本当に嬉しくて、これからも君と一緒に過ごせるんだって思うとそれだけで幸せだった」
「あの…」
「でも僕は自分でもこんなに欲深い人間だったなんて知らなかったんだ…。だから、君が好きだって、言おうと思ったんだけど…それがミクリじゃないにしろ、ミズキちゃんの好きな人に僕なんかが叶う訳ない」
「ダイゴさん!」


だからね、と言葉を続けようとしたダイゴさんの言葉を無理矢理遮る。
ダイゴさんは自分の気持ちを伝えてくれているけど、私だって、ダイゴさんに言いたい事があるのだ。
ここまで来るのに随分と時間は掛かってしまったけれど。


「私も、言わないといけないことがあったんです。…気付いたのは本当に少し前でした」
「うん」
「ダイゴさんに、好きな人がいるって知った時…私、ショックで…ダイゴさんの好きな人ならきっと凄く素敵な人なんだろうなって、咄嗟に昔憧れていたミクリさんの名前を出してしまったんです…」
「……え?」
「ダイゴさんに好きな人がいるのに、…振られるのが分かってて好きだなんて言えなくて…。」


私たち、凄く遠回りしてましたよね。そう言って笑うと、ダイゴさんはこれでもかと言うほど目を見開いて、驚いていた。
その様子が普段のダイゴさんからはかけ離れていて、可愛く思える。

「え、ミズキちゃん、今…」
「好きになっちゃいました、ダイゴさんのこと」
「僕の話を聞いて、不快に思わなかった?」
「ダイゴさんが私のことをずっと想っていてくれたんだってことは分かりましたけど、不快には思いませんでしたよ」
「僕、きっと独占欲強いよ」
「私たちどこか似てますから、大丈夫ですよ」
「そっ、か…」
「それよりも、私はいつまで押し倒されてなきゃいけないんでしょうか」
「あ、ごめん、怖がらせたら帰るかと思って」
「帰ろうにもこの土砂降りじゃどこにも行けませんよ」
「はは、そうだね」


どうやって帰りましょうか、と窓の外を眺めると、先ほどまで滝のように降っていた雨が止み、真っ黒な空に白い雲が掛かっているだけだった。
そう言えば、いつからか叩きつけるような雨の音がしなくなっていた。


「ダイゴさん、もう雨止んでます!」
「残念だな、ミズキちゃんと泊まっていけるかと思ったんだけど」
「なに馬鹿なこと言ってるんですか、帰りますよ!」
「そうだね、今日は帰ろうか」
「今日はってなんですか」
「ねえミズキちゃん」
「はい」
「好きだよ、…愛してる」
「え、あの…えっと」
「ミズキちゃんは?」
「えっとですね、あー、さっき言いました」
「もう一回聞きたい」
「ダメです、1日1回です」
「分かった、じゃあ明日聞かせてね」


楽しみにしてるから、と今までの中で1番の笑顔を見せたダイゴさんに、これから仕事もプライベートも毎日一緒なのに本当に大丈夫だろうかと頭を抱えたのでありました。


「私、公私混同はしませんからね」
「分かってるよ、僕もほどほどにする」
「ほどほどでもダメです」
「じゃあ家に帰ったらのお楽しみにしておこうかな」
「私の家狭いからダイゴさん入れませんよ」
「ミズキちゃんも僕の家に住めば大丈夫だよね」
「えっ、早過ぎませんか?」
「僕にして見たら遅過ぎる位なんだけど…じゃあまずはこの合鍵でミズキちゃんの来たい時に来たら良いよ」
「ビックリするほど用意周到ですね…」
「褒め言葉として受け取っておくよ」



幸せよ、こんにちは。
(じゃあそろそろ帰ろうか)
(ダイゴさん)
(ん?)
(大好きです!)

END

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