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いくら慣れているとは言え、夜の洞窟は危険だし、どうやら先程にわか雨が降ったらしい。
空気が湿っていて雨の匂いが鼻をくすぐる。雨で濡れている岩場を歩くなんて狂気の沙汰、まず洞窟には行かないだろうとダイゴさんの行き先候補をひとつずつ絞っていく。
……でも絞っていくと言っても私あの人のプライベートなこととかまだ何も知らないんだよなぁ、と、人探しのプロフェッショナルである私の相棒に任せることにした。
ホントは自分が見つけたかったけど、まぁいいか。
「ルカリオ、探知出来る?」
「がうっ」
「分かった、あっちね」
こくりと頷くルカリオの頭を撫でて、横目でこちらを見ている指示待ちだったエアームドの背を軽く叩いた。
「デボン本社までよろしく」
ルカリオをボールへ戻したことを確認してからグルリと大きく旋回したエアームドの首に、落ちないよう掴まる。
目的地が明確になったためか、滑るように空を切るそのスピードに耐えるのはなかなか大変だったりするのだ。
なるべく空気抵抗を受けないように身体を縮ませていれば、銀色に鈍く光る相方の身体にパタリと水滴が落ちてきたのが見えた。
一粒、二粒、徐々に数を増やすのは思わずため息が出てしまうくらいに大粒の雨。
「さっき雨雲流れて行ったばかりじゃないの!?ああもうツイてない…!」
暗く頭上に停滞している雨雲を苦々しく見上げれば、まるでそれが合図だとでも言うように、バケツをひっくり返したような大雨が視界を真っ白く覆った。
…ホントに、今日は何て厄日?
雨で滑り落ちないように先ほどよりも強く掴まる。
叩きつけるような雨のせいで、降り始めてまだ時間は経っていないというのに全身びしょ濡れになってしまった。
「ダイゴさんも濡れてなければいいけど」
あの人直ぐに風邪引きそうなイメージがあるし。…それともここ数年風邪とは縁のない私が変なのだろうか。
「あー、寒い、早くお風呂入りたい」
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