* 恋は盲目 | ナノ


8

衝撃の告白に呆気にとられている私を他所にダイゴさんはポツリポツリと話し出した。誰か、この私の心臓を握りつぶして欲しい。何故かさっきからどくどくと煩い、別にダイゴさんに好きな人がいたって関係ないのに。何で指先の震えは止まらないのだろう。


「僕の好きな人は凄く優しいんだ、…でも優しすぎて僕にはどう扱っていいのか分からない」
「そ、そうなんですか、でもダイゴさんも優しいから、きっと大丈夫だと…思います」
「……僕がその優しさを利用していたとしても?」
「多分、内容によりますね。…私は悲しませなければ許されると思います、よ」
「なら、僕は許されないことをしてしまったんだね。…きっと彼女は傷付く。」


悲しそうに溜め息を吐くダイゴさんを見て、本当にその人のことが好きなんだと気が付いてしまった。なら私はダイゴさんの側にいてはいけない。…きっと誤解されてしまうから。


「ねえミズキちゃん」
「は、はい」
「ミズキちゃんはさ、好きな人…いる?」


一度は静まった筈の心臓がまた大きく跳ね上がる。ぎゅう、と手を握りしめると私は呼吸を正した。そうだ誤魔化せばいい、そう思っていても喉がカラカラで声がでない。――私、いつの間にかダイゴさんのこと好きになってしまったんだ。
もう遅いけど、それでもこの最悪なタイミングで気付いてしまった。気付く前に失恋してしまったなんて私って何でいつもこうなんだろう。


「す、きな人…います」
「…それは、僕の知ってる人?」
「……ダ、ダイ…」
「うん」


だめ、優しいダイゴさんとその彼女に迷惑掛けることは目に見えてるんだから、ダイゴさんが好きになった人なんだから絶対に素敵な人の筈。――私なんかが、敵うわけない。
そう思うと魔法のように口から言葉が流れ出てきた。嘘ではない、昔は好きだったんだから。


「…ダ、ダイゴさんも知ってると思うんですけど、ルネのジムリーダーを務めている、ミクリさん、です」



一目惚れでした、そう付け足すとダイゴさんはゆっくりと笑った。そして残酷な事実を口にしたのだ。


「―そう、さっき言った僕の嘘を見破った友人って言うのは、彼のことだよ。ミクリは古くからの友人なんだ」


こんな偶然あるんだね、そう楽しそうに笑うダイゴさんを呆然と見つめていると、彼はボールからエアームドを出し呆ける私の腕を掴んで無理矢理乗せる。丁度ダイゴさんに後ろから抱かれる感じで、不謹慎ながらも頬が赤くなった。


「ミクリとミズキちゃんならお似合いなんじゃないかな、実は今日も彼の家でご馳走になる予定だったんだ。」
「…そ、うですか」


取り返しのつかないこと、とはまさにこのことだろう。今はこれで最後になるだろうダイゴさんの温もりを感じていようと、気付かれない程にそっと寄り掛かった。


 

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