* 恋は盲目 | ナノ


6

本日は日曜日、雲ひとつない青空を見上げて朝の冷たい空気を肺一杯に吸い込んだ。何故知っているのかは知りたくもないのだけれど副社長が私の家まで迎えに来てくれるらしい。
そして逃げ出すなら今しかないと言うことも勿論理解している、しかしあの副社長のことだ、きっとただでは済まないのだろう。


「今日は大人しくしてよう」
「がう」
「どうしたのルカリオ」


私の服の裾をグイグイと引っ張り空を見つめるルカリオの視線の先には銀色に光る何かが、ここへ降り立とうとしていた。このポケモンは、もしかしてエアームド……と、見間違えでなければ背中に乗っているのは、副社長だと思う。
間抜けな顔をして驚いている私を他所にヒラリと優雅に目の前に着地した彼を見て目眩がした、…ああ今日も爽やかな笑顔ですね。


「やあミズキちゃん、おはよう」
「…おはようございます」
「どうしたんだい?」
「いえ、副社長のことだからリムジンやらで来るのかとばかり…」


チラリと副社長の横で羽を伸ばしているエアームドに目をやり溜め息を吐くと、隣のルカリオにドンマイと言わんばかりに腰を叩かれた。…もう本当にその通りだと思う。


「よし、行こうか。ミズキちゃんは落ちないように前に乗って」
「大丈夫です」
「遠慮することないさ、エアームドも二人くらい平気だから」
「あの、取り敢えず見て頂ければ分かるかと。」


腰のホルダーからモンスターボールを取り出してカチリとボタンを押すと、赤い光に包まれて現れた私の長年の相棒であるエアームドが姿を現す。まさか副社長と被ってるだなんて誰が想像しただろうか。


「相当鍛えられてるね…もしかして、ミズキちゃんもなかなか強いんじゃないかい?」
「そこまで強くないですよ」
「リーグにはチャレンジしたのかな」
「いやいや、一応目指していたんですけど結局ミクリさんに勝てないまま終わってしまって」
「……自分では結構有名だと思ってたんだけど、ね」
「何がです?」
「いいよ、それじゃあそろそろ行こうか」


曖昧に微笑む副社長に首を傾げつつもエアームドの首筋を撫でると、気持ち良さそうに目を細めて小さく鳴いた。仕事が忙しかったせいか、この子に乗るのも随分と久しぶりで胸が高鳴る。
毎日色んな場所を飛び回っていたがずっとずっと昔のことのようだ。安全運転…飛行してもらわないとな。


「久々によろしくね」


 

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