ももたろう / IDOLiSH7
みんな、こんにちは!
今回のナレーションは、俺、七瀬陸が担当しますっ!!
昔むかし、あるところに!
一織おじいさんと壮五おばあさんがいました。
何でもこなせて頭もいい二人は、会話は少ないけれどそれなりに仲良く暮らしていました。
ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
「この山の気候と地形を分析すると・・・・・・。そうですね、いっそ焼畑農法の方が芝も生えませんし都合がいいかもしれません。おまけに生産性も生まれるのでまさに一石二鳥です。足腰が動かなくなった時の為に、少しでも蓄えを増やしておかないと・・・・・・。」
「ふぅー。今日はいい天気だ。洗濯日和!僕、洗濯ってけっこう好きなんだ。心も綺麗になっていくみたいで。あ、この赤いシミは・・・・・・この間うっかり飛び跳ねてしまったタバスコかな?心に付いたシミも・・・・・・シャツの汚れみたいに落とせたらいいんだけど・・・・・・。」
内向的な壮五おばあさんがタバスコのシミについて思いを巡らせていた、その時です!
どんぶらこ〜♪どんぶらこ〜♪
なんと大きな・・・・・・えっと、何だっけ・・・・・・?
あ、そうだ、プリン!!プリンでいいや!
そうです、プリンが流れてきました!!
「何だろう!?この大きなプリンは・・・・・・!!ラベルに商品名が書いてある・・・・・・“王様プリン”?もしかして都会で流行ってるのかな?このまま流しておくのも、環境問題的によくない気がするし、とりあえず家に持ち帰っておじいさんに相談しよう。」
家に帰って一織おじいさんは驚きました。
壮五おばあさんが細く見えて実は意外と力持ちだった事に。
「おじいさん、このプリン・・・・・・、どうしたらいいだろう?」
「本来ならこんな得体の知れない、怪しすぎるものはこのまま処分したい所ですが・・・・・・。今回はナレーションが七瀬さんです。また無茶ぶりされないうちにとっとと真っ二つにしてしまいましょう。」
あー!一織のやつひどい!!
見てろよ、俺だってちゃんと最後までやり通せるんだから!
えっと、おじいさんが大きな鎌でプリンを真っ二つにすると・・・・・・。
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー・・・・・・なあ?あと、何回、言えばいい?」
大きな大きな男の子が産まれて来ました!!
玉のように可愛いその男の子を、二人は環と名付けて可愛がりました。
環は来る日も来る日も王様プリンばかり欲しがりました。しかし残念なことに、王様プリンは都会にしか売っていません。一織おじいさんは遂にネットショッピングを始めました。
「環くん、プリンは1日3個までって約束だろう!?僕が作ったご飯もこんなに残して・・・・・・。」
「だってそーちゃんの作ったものは辛くて食えねーんだもん!!俺の嫌いな野菜、いっぱい入ってんし!!」
「だって、もやしは安くてお腹たまるし、野菜はおじいさんが育ててるから・・・・・・。うちの家計は今、君の王様プリン代が、半分を占めてる状況なんだよ!?はぁ・・・・・・。僕はどこかで育て方を間違ったのだろうか・・・・・・?」
「全く、相変わらずですね。毎日このやり取りを聞かされる私の身にもなってくださいよ。」
「「デフォルト設定ですから・・・・・・。」」
環は反抗しまくりの問題児でしたが、根は優しい素直な青年へと成長しました。
そんなある日のことです。
鬼ヶ島に棲む鬼が、あちこちの村へやって来ては人々の物を盗み、荒らし、困らせているという噂が流れました。
環は根は優しいやつだったので、それなら自分が鬼を退治しに行こうと思いました。
「えー、めんどくさい・・・・・・。」
・・・・・・・・・。そうだ、いいこと思い付いた!!
どこかの偉い人が、鬼を退治した者には褒美として、なんと王様プリン30年分を与えると言い出しましたっ!!
「やる、やりますっ!!30年分・・・・・・。毎日死ぬほど食える・・・・・・!!」
「いいかい?1人で全部食べないで、途中で猿とかキジとか犬に会ったら、このきびだんごをあげるんだよ?」
「一応言っておきますが、ちゃんと考えて行動して下さいよ?離れた所で好き放題されても、私達は何のフォローも出来ないんですから。鬼は殴っても構いませんが、一般人には絶対に手を出さないでください。」
「うす。俺、王様プリンのために頑張る!!」
「せめてそこは困っている人々の為にと言っておきましょうよ・・・・・・。」
「環くん、しっかりね!」
「お小遣いももらったし、途中コンビニでうさみみフレンズのお菓子売ってたら、買っておいてやんよ!」
「???何の事だろう、ねぇ、おじいさん?」
「別にっ、た、ただのお土産のつもりなんじゃないですか!?」
こうして環の冒険が始まりました。
環は家を出て早速きびだんごを食べようと思いましたが、見るからに辛そうな、真っ赤なそのきびだんご・・・・・・。
さすがの環の食欲も、一瞬にして無くなりました。
「環くん・・・・・・。僕は通りすがりの猿だよ。名前は十龍之介。お腹が減ってしまって・・・・・・。そのきびだんご、僕に分けてくれないか?お礼に君の力になってあげるよ。」
「良いよ。はい、リュウあにき。」
「う゛っ・・・・・・!!!?」
壮五おばあさんの激辛きびだんごによる犠牲者が出ました。
猿の十さんは登場後間もなく腹痛で運ばれました。
「ねぇ・・・・・・。お腹空いちゃった・・・・・・。僕にそのきびだんご、分けてくれない?僕は、弱ったキジの九条天だよ。お礼に、一緒に鬼ヶ島行ってあげる。」
「さんきゅー。3つくらい、食う?てんてん。」
「これは・・・・・・っ、うぅ・・・・・・。人間の食べ物じゃない・・・・・・!!」
次の犠牲者はキジの天にぃです。
天使のような天にぃは、悪魔のように・・・・・・真っ青になってしまいました・・・・・・。
「なぁ、腹が減ってんだ・・・・・・。大分余ってるみたいだけど・・・・・・腰につけたそれ、俺にくれよ?俺は犬の、八乙女楽だ。」
「あー、みんないらないみたいだから、いいよ、がっくんに全部やる。」
「マジかよ!お前、優しいなー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐはっ・・・・・・。」
最後の犠牲者は八乙女さんでした・・・・・・。
環は歩きながら被害を振りまいていきました。
後にこの一連の事件は「スパイシーソウゴボム」と呼ばれる事になります。
「さっきから救急車いっぱい通ってんなー。」
「せっかく登場して下さったTRIGGERの皆さんに、僕はなんて事を・・・・・・!!切腹させていただきます・・・・・・。一織くん、介錯を頼む・・・・・・」
「このパターンいい加減やめましょうよ!?私の分析では、そろそろファンの間にもマンネリ感からくる辟易の色が見え始める頃ですよ!!?」
一織おじいさんと壮五おばあさんが、切腹するかしないかで揉めているうちに、とうとう環は鬼ヶ島に着きました。
「ほー。ここが鬼ヶ島か。うす!!俺、環!!鬼、いるー?」
環が勇ましく洞窟へと進んで行くと・・・・・・。
「ほうじ茶とたい焼き、チョコって意外とイケるなー。」
「おいナギ、たい焼きはこし餡だろ!?」
「誰が何と言おうと、ワタシはクリーム一択デス。」
「どれもうまいでいいじゃない。」
緑鬼、橙鬼、黄鬼がくつろいでいました。
人々を襲うイメージとは大分かけ離れた、脱力系でした。
「美味そー!!何、菓子パー?俺も混ざっていい?」
「「「ブレイクしようぜ!!!」」」
まさかのお菓子パーティーが始まりました。
脱力系の鬼達×脱力系の環の組み合わせは、思いの外意気投合したようです。
が、しかし!!
環がうっかりここに来た理由を話すと、鬼達が豹変しました!!
「俺達を追い払おうってんなら、受けて立つぜ?」
「このツノを見ても怖がらなかった事だけは褒めてやるよ。」
「このメガネをかければ、ワタシ達にはアナタのウィークポイントがお見通デス!」
フードとメガネで変身してきた鬼達は、環が思っていた以上に強敵でした!
環は隙を待ちながら必死で鬼ヶ島中を駆け回ります。
しかし、ある部屋に入った時。
「はっ、は・・・・・・っ、何だよ!?この部屋・・・・・・。」
「Oh、ここな!ここなのリアタイ始まる時間デス!It’s マイシアタールーム!!フィギュア、マジカルステッキ、・・・・・・準備は万全デス・・・・・・。Oh,mygod、CM長いデス・・・・・・。」
黄鬼はアニメのオタクでした。
まじかる☆ここな一色の部屋から、黄鬼が出てくる事はありませんでした。
「はぁっ、今度の部屋は何だよ!?」
「お、武蔵。お疲れ様。そろそろ昼寝の時間だ。悪いけど、お前さんとの追いかけっこはここまでな。」
緑鬼は自主的に部屋に戻り、30年間の昼寝に入りました。
それでもまだ橙鬼が追いかけてきます。
しかし、とうとう環は逃げ場を失います。
「遂に追い詰めたぞ!お前とは、仲良くやっていけるって・・・・・・、俺達にも、初めての人間の友達が出来たって思ってたのに・・・・・・。」
「ごめんね、敵なんだ。」
「だからもういいよ!!そのお情程度の捻りを加えたテンプレ回答!!俺・・・・・・、小柄だしさ・・・・・・。緑鬼や黄鬼の足引っ張りたくないんだよ・・・・・・。鬼として、ちゃんとみんなの役にたちたい・・・・・・。それに、本当なら人間を襲うんじゃなくて、もっと仲良くしたい・・・・・・。その方法が分からないだけなんだよ・・・・・・。」
可哀想なことに、橙鬼は泣き出してしまいました。
それをみた優しい環はこう言いました。
「とりあえず・・・・・・、うち、来る?」
橙鬼は、緑鬼と黄鬼を部屋から無理矢理引っ張り出しました。
環は鬼達を案内しながら、一織おじいさんと壮五おばあさんの待つ家へと戻りました。
途中、コンビニへ寄ってうさみみフレンズのお菓子も忘れずに買いました。
「ちょっと、環くん!!鬼を退治してくるって言ったのに、鬼を連れてくるって一体どういうつもりなんだ!?」
「追いかけられて、部屋にこもり始めて、話聞いてたら泣くし、ワケありっぽかったから・・・・・・、連れてきた。」
「連れてきた。じゃありませんよ!!その下手な説明で納得するほど私は甘くはありません!殴ってもいいけど勝手な行動はするなとあれ程言ったでしょう!?」
「あ、これ。はい、いおりんにお土産。お菓子は、俺が食っといた。」
「これは・・・・・・レアなロップちゃんじゃないですか!?仕方ありませんね、鬼達にも何か事情があるのでしょう。話の内容によってはしばらくうちに置いても構いませんよ。」
「待って、おじいさん!そんな安価なものに買収されないで!!!」
天然に見えて意外としたたかだった環の作戦は成功しました。
壮五おばあさんは胃を痛めながらも、律儀に鬼達に美味しい茶を出してあげました。
「俺達、鬼だからさ・・・・・・。生きてくために、他に方法知らないんだよ・・・・・・。」
「弱肉強食・・・・・・、デスが、ワタシ美しいデス。この美貌の元に皆さん許してくれマス・・・・・・。」
「人のものを奪って、要は手っ取り早く楽したいだけなんだよ。」
「な?なんか、可哀想だろ?」
鬼達の事情を聞いた一織おじいさんと壮五おばあさんは、正直そこまで心を動かされませんでしたが、ここに居座られても困るので、いい方法を考えました!
「ここに行ってみてください。きっと社長が力になってくれるはずです。」
「「「小鳥遊芸能プロダクション?」」」
「そのルックスと、実はそんなに凶暴性がないというギャップはあなた達の強みです。そこを前面に出して売り出せば、歌って踊るだけで恐ろしい程の人気と善意的な社会効果が得られるかも知れません。」
「おじいさんの分析は確かだよ。僕たちが力になってあげられるのはここまでだけど・・・・・・、自分達の力で道を切り開くのも、時には必要なことだと思う。君達を見てるよ。僕らはここから応援している。」
もっともらしい言葉を並べて、おじいさんとおばあさん、それから環は都会へ向かう鬼達を見送りました。
それから3年後。
「いおりん、そーちゃん!!見ろよ、このチラシ!!」
「何だい?王様プリンの特売情報でも載ってたの?」
「これは・・・・・・!」
そのチラシにはこう書かれていました。
『鬼ゴラスファイター、鬼ヶ島アリーナにてこけら落としコンサートを開催!』
「こんなことなら、直接私達もついて行ってマネージメント業務を請け負うと社長にかけ合えばよかったですね・・・・・・。大きなビジネスチャンスを失いました・・・・・・。」
「限定グッズの案を出して、アイデアの使用料を貰うのはどうだろう?」
「俺・・・・・・こーゆー悪い大人に、なりたくない・・・・・・。」
環はちょっぴり涙目でしたが、鬼達が上手くいったことをとても喜びました。
こうして鬼ゴラスファイターも、おじいさんとおばあさん、そして環のみんなは幸せに暮らしましたとさ!!
めでたしめでたし!!
ね?どう?
俺だって上手くまとめられたでしょ?
「それにしても・・・・・・天にぃ、大丈夫だったかな・・・・・・?」
END
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