四月馬鹿 / 逢坂壮五










────ずっと好きだった。僕と付き合ってください。────









「壮五・・・・・・さん?」

「返事、もらえたら嬉しいんだけど?」

「どうして、突然・・・・・・。」







ごめんね、蒼マネージャー。
こんな風にしか、自分の気持ちを伝えられない僕を許して。







「う、嘘・・・・・・ですよね?」

「どうしてそう思うの?」

「今日がエイプリルフールだからです・・・・・・それにっ・・・・・・」

「それに?」







物分りの良さそうな表情を浮かべる。
でも、本音は違う。
止めて蒼ちゃん、それ以上言わないで。
それは僕も良く分かっていることなのだから。







「壮五さんは、アイドルですし・・・・・・私はそのマネージャーです。」

「それって、何か問題でもあるのかな?」

「大問題ですよ・・・・・・!自らスキャンダルの危険を作るなんて・・・・・・。IDOLiSH7は壮五さんだけじゃない、七人でIDOLiSH7なんですから!!」







わざととぼけたように言ってみたけれど。
蒼ちゃんの辛そうな顔。
本当はそんな顔が見たかったわけじゃない。



もう、やめよう。








「ごめんね・・・・・・みんなエイプリルフールだって、何かびっくりするような嘘つくぞって張り切ってたから、僕も便乗してみたんだけど。僕は、ユーモアのセンスがないから、おかしな内容になっちゃったね。今更だけど、馬鹿だなって呆れてそのまま忘れてくれていいからね!!ホント・・・・・・、その、ごめんなさい。」







思ってた以上にずっしりとくる・・・・・・。
そんな目で見ないでよ。
悪かったのは僕だけど。



ずっとマネージャーである蒼ちゃんが好きだった。
一生懸命で、迷いながらも真っ直ぐ進んでく。
僕達IDOLiSH7のために。
その瞳が好きだった。
兎みたいに柔らかそうな髪の毛も、細い指も。
けど、僕がIDOLiSH7の逢坂壮五である以上、この恋が叶わないことはよく分かっていた。だからこうして、エイプリルフールなんてものに乗っかってみたけれど。



報われないのは変わらない。
好きな気持ちも、結局は消えないまま。
エイプリルフール、四月馬鹿。



大馬鹿者は──── 僕だ。







「私も・・・・・・壮五さんが好きです。」

「マネージャー?」

「フフッ、何でも出来るのに、いつも一生懸命だから考え込んでしまう壮五さんが・・・・・・ずっと好きでしたよ。」

「でもさっき・・・・・・」

「そうでしたね。すみません、今私、嘘つきました。壮五さんの優しさで、騙されてください。だって今日は、エイプリルフールですから。」







そう言って申し訳なさそうに笑った蒼ちゃんは、
とても苦しそうで、悲しそうで。
でも、だからこそ誰よりも愛しくて。







「分かった。嬉しいけど、騙されたことにしておくよ。」

「私も、そうさせていただきます。」

「次の仕事、そろそろ出る時間かな?」

「そうですね、おそらく部屋で昼寝をされている大和さんと環さんを起こしてきますね!それでは、また後で。」

「うん、お疲れ様!」








小さな足音を立てながら去っていく蒼ちゃん。
いや、僕達の“マネージャー”。
何かが変わったわけじゃない。
もしかしたらこれは前進ではなく後退なのかもしれない。
それでも。
何とも言えない温かさと満足感が胸に広がる。



僕らみたいな、報われない恋心には。
とても優しい日なのかもしれない。










今日はエイプリルフール。














END.





















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