遠い昔に願った流れ星に / 逢坂壮五

(Twitterの診断結果のお題で。死ネタ注意。)













「壮五くん、知ってる?流れ星にお願い事をすれば叶うんだって。私の病気も、治るかなぁ・・・・・・?」

「それなら僕がお願い事してきてあげる!お外へ流れ星を見に行けない蒼ちゃんのために。」

「ほんと!?」

「約束するよ。僕が、治してあげるからね!」











規則的な目覚ましの音で目が覚める。
ここは・・・・・・。僕はあの時・・・・・・。





さっきまでいた物寂しい病室ではなく、自分の部屋。
ベッドに寝ているのは蒼ちゃんではなく、僕だった。

この夢を見たのはいつぶりだろうか。
まだぼやけたままの視界。
今さっき指切りをしたばかりの小指を見つめる。








僕は約束を守れなかった。

蒼ちゃんは、医者からも治らないと言われていた病気だった。
それでもまだ幼かった僕は、病室でニコニコしている蒼ちゃんが居なくなるという事を理解出来ていなかった。
こんなに元気なのに、こんなに笑ってるのに、どうして治らないの?
そう、単純に思っていたんだ。

本当は知らなかっただけ。
どんなに蒼ちゃんが無理をしていたのかを。

ある日お見舞いに行くと、蒼ちゃんはとても苦しそうにしていた。
あんな姿を初めて見た僕は、悲しくて、苦しくて。なのに、どうしたらいいのか分からない自分が悔しかった。

その時、蒼ちゃんが言った。
流れ星に願い事をすれば、叶うと。
大人ならばそんな迷信に縋るよりも、もっと効果的な薬や手術に希望をかけるのだろう。
子供の僕に出来る精一杯。
それしか他に術を知らない精一杯。

僕は流れ星を探した。
毎日毎日探した。
暗くなれば、決まって空を見上げ続けた。

ある日。
僕は遂に流れ星を見つけた。
消えてしまう前に願い事を3回唱えないといけない。
必死に唱えた。

「蒼ちゃんの病気が治りますように、治りますように、治りますように・・・・・・」

最後の辺りはもう流れ星が消えてしまっていたかもしれない。
不安だったけれど、これで蒼ちゃんはきっと治る。
そう信じていた。
明日、お見舞いに行った時にもう大丈夫だよと伝えよう。
きっとまた元気になってくれる。
笑ってくれる。

次の日。
僕は現実を知った。
蒼ちゃんは前の日の夜に亡くなっていた。

こんなデタラメを言ったのは誰だ!
僕は突き止めることも出来ない大嘘つきの犯人に怒りながら、ただただ自分の無力さに泣いた。

流れ星なんて、一瞬の儚い夢だ。
どんなに綺麗に輝いて見えても、それは大気圏に突入しながら宇宙の塵が燃え尽きているだけの事。もう既に終わりかけているものだ。
誰がどんなに美しく脚色したって、消えていくその塵を救うことは出来ない。消滅を待つだけ。
そんな終焉の一コマに願いをかけたところで、その命が終わる事は初めから分かっているのに。

何も出来なかった自分に対してか。
現実的な思考に育てられていく自分に対してか。
大人になればなるほど、僕はこの夢をみる度に心が冷たくなっていった。











今夜は流星群が降るらしい。
ここの所テレビではご丁寧な解説が毎日のように流れ、IDOLiSH7のみんなも何かと話題にしていた。

あの時の蒼ちゃんの命はもう戻らないけど。
それでももう一度何かを願ってみようかと思えるようになったのは、僕自身が変わったからなのだろう。
見えないもの、形のないもの。
逢坂家が散々反対していた不確かな音楽という夢は、僕がアイドルになった今、既に現実へと叶っているのだから。

とは言っても、残念な事に今夜は僕達のツアー最終公演。
流星群は見られないけれど、IDOLiSH7の成功と発展を皆で願えるのだから、それはそれで素敵な事なのかもしれないと思う。















ラストの曲に差し掛かった瞬間。

突然ステージのライトが消える。
トラブルかと慌てた僕達を他所に、ファンのみんなが振っていた7色バラバラのライトが、全て一面1色になる。



聴こえてきたのは、僕達が最後に歌う予定だった歌。









夢を見たあの日を覚えているよ
僕らが出会った誰もいないステージ
スポットライト まだ小さな光だったけれど
集まれば大きく強くなれる気がした


落ち込んでもそこで終わりじゃダメさ
また新しいスタートに胸踊らせて
こんなハズじゃ無かったと
繰り返すよりも
僕らは今日を明日を変えてゆきたい


手を振った未来で君に会いたい
走り抜けた季節で輝けるように
僕らの歌よ永遠に響け
七色の虹が君を照らしていく
七色の虹が君の笑顔になる














「ハハッ・・・・・・なんだコレ、サプライズかよ・・・・・・。」

「おそらく発案はマネージャーでしょうね。」

「Amazing・・・・・・!」

「俺達の歌、こんなにも良い曲だったんだなー・・・・・・。」

「ファンの声って、こんなにあったかいんだね・・・・・・!!」

「なんか、テレビでやってた、流星群?みたいだな!」







そう、それはまるで流星群。
小さな光の粒がゆっくりと歌に合わせて左右に流れる。
会場にこれでもかと響くアカペラの大合唱。







目の前に広がるこの流星群に。
そして、遠い昔に願った流れ星に。
もう一度、願いを。
















────僕の歌が君に届きますように────













END ( words by みそら )









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