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「ダメだ・・・・・・環君、もう一回。」
「って、もうソレ何十回目だよ!?そーちゃんいつも細かいけど、なんかいつもより百倍細かい。」
「ごめんね。でもまだ何かが違うんだ。もっと、揃えなきゃいけない気がするんだ。いや、違うかな。それぞれの個性を活かしながら、歩み寄る・・・・・・融解・・・・・・?」
「誘拐って何だよ!誰を攫うんだよ!?そーちゃんマジ意味分かんね・・・・・・」
「そんな事言わないで、頑張ろう?王様プリン、買ってあげるから。」
「だから、その悪い金持ちみたいなやり方で俺をコントロールすんなよ。」
「何か言った?」
「・・・・・・言ってません。そーちゃん、その笑顔怖い。」
「でも、絶対僕達のためにもなるはずだから。環君となら、きっと出来るって信じてるから。」
「・・・・・・分かったよ。あんま分かんねーけど。」
「さ、もう一回!」
レッスン室では何度も同じメロディーが流れる。
あの後、正式な楽曲が事務所に送られて来てからはずっとこんな調子だ。IDOLiSH7としての仕事をこなしながら、他の個人の仕事をこなしながらの練習は相変わらず大変だけど、それでも今まで以上に時間をかけて取り組んでいる。
環君には申し訳ないけれど少しずつ、少しずつ掴めてきたように思う。
楽曲の完成度に負けないくらい、僕達もクオリティを上げていかなければというプレッシャー。
約束の件だけでなく、蒼さんの作った曲が僕を夢中に、そしてとにかく必死にさせていた。
発売前日。
蒼さんからラビチャが着た。
『明日発売日だね。どう?』
『結果を楽しみにしていてください。』
僕はそうとだけ返して、眠りについた。
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「壮五さん、環さん!大変ですっ!!」
慌てた様子で寮にマネージャーが駆けてきた。
「MEZZO"の新曲、今週のCD発売セールストップです!1位ですよ!!しかも、2位のアーティストとこれだけの差を付けて!!」
「すっげー!!そーちゃん、やったな1位だって!俺達今週の1番だって!」
「ホントに・・・・・・!?」
「ハイ、この速報の表を見てください!1位の所に、堂々とMEZZO"の名前が書いてあります!おめでとうございます!」
「やった・・・・・・本当に獲れたんだ・・・・・・!!」
「お二人共、今までにないくらい頑張っていらっしゃいましたから!あ、そうだ。早速社長に報告してきますね!!」
マネージャーはまた慌てて駆けていく。
「そーちゃん、おめでとう。」
「環君・・・・・・君が頑張ってくれたおかげだよ!」
「だって、そーちゃん必死だったから。何でかはよく分かんねーけど、頑張りたかったんだろ?」
「うん、うん・・・・・・。嬉しいな、夢みたいだ。」
「そーちゃん、よくソレ夢みたいって言うけどさ、夢叶えるためにアイドルになったんだろ?俺達は夢見るんじゃなくて、叶えなきゃいけないからここにいるんじゃねーの?」
「環君が尤もらしいことを言うなんて・・・・・・」
「特訓のおかげで、俺も、色々考えたから。」
驚くことに、あの猛特訓は環君にも良い影響を与えたらしい。おかげで環君との距離も、また少し縮める事が出来たように思う。音楽って、やっぱりすごい力を持っているんだと胸が熱くなった。
こうして蒼さんが提供したMEZZO"の新曲は、
大ヒットとなった。
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