混ざり出す絵の具と新しい色




「というわけでですね、お蔭さまで無事この番組『キミと愛なNight!』も大分定着してきました。そこで今度の課題になってくるのが、チャレンジ内容です。現在までの内容としてはそば打ち体験、旅館での女将体験、水族館での飼育員体験、保育園での保育士体験など様々ですが。ここら辺でこれまでとは違った絵が撮れるような、何か斬新な体験を挟みたいと思っています。」







番組制作側との大切なミーティング。
毎回、直接僕らIDOLiSH7のメンバーも参加する形で行われる。それはつまり、僕達の意見もそのまま反映されるということ。ただ任されるだけでなく、一緒に試行錯誤しながら作り上げるこのスタイルは、僕達にとってもとても勉強になることが多かった。

僕達メンバーが毎回チャレンジするその内容は、とても重要だ。何にチャレンジするかその内容によって、メンバーの得意不得意や個性も出るし、撮れる絵もアドリブの会話内容も全て変わってくる。インパクトがあって、本格派で。それでいて僕らの良さが伝わる、そんな内容・・・・・・。







「まさにこの番組やこのミーティングと同じように、教わった事をするのだけではなく、今まで以上にもっと私達の個性や意見を直接反映させられる、そんなチャレンジ内容がいいかもしれませんね。」

「さすがイチ。分析するのもまとめるのも早いなー。」

「つっても、具体的にどんなのになるんだ?それ。」

「ものづくり、はいかがでしょうか?手っ取り早く一つ一つに絶対的な違いが出ます。視覚的にも、工程的にもいい絵が撮れることは間違いありません。」

「画家はもう壮五さんがやってるし・・・・・・。」

「陶芸とか?」

「体験内容としてはメジャー過ぎます。」

「ワタシにいい案がありマース、コスプレイヤー。衣装、小道具、アニメへの愛に溢れた最高のものづくりデース!」

「ここまでのいい流れをぶち壊す気ですか?却下です。」

「ミツキ、一織怖いデス・・・・・・。」

「お前が変な案出すからだろ?お前は何かないのか、環・・・って寝てんじゃねー!!」

「お気に入りの・・・・・・帽子の・・・・・・内側に・・・・・・」

「ハハ!コイツ、夢ん中でも新曲の練習してんのか?って、そんな真面目なキャラじゃないだろ。」







僕の頭に一つの案が浮かぶ。







「帽子・・・・・・。」

「壮五さん?」

「帽子職人の体験、とか、どうだろう・・・・・・?」

「なかなか面白いですね。逢坂さん、もしかしてお知り合いとかいらっしゃるんですか?」

「知り合いというか、僕のお気に入りの帽子屋さんがあるんですけど、その方は職人として工房もやっていらっしゃるんです。実際その作品はクラフトマンシップに溢れた本格的なものです。イタリアにも修行に行かれているみたいで・・・・・・。」

「すげーな!どんな人なんだ?髭モサモサのオッサンか?」

「いや、女性です。僕らとそんなに歳も変わらない。」

「なるほどなー。最近ソウが黒魔術を覚えに行ってた、例の魔女か。」

「ヤマさん、それ違う。そーちゃんが覚えようとしてたのは、モグラ叩き。」

「ははーん、不思議の国か。」

「ちょっと、みんな揃ってそんなにニヤニヤ見られても困るんだけど・・・・・・。」

「年齢的にも、女性ということも、職人という概念への期待を良い意味で裏切ります。逢坂さんから、お話を持ちかけてはいただけないでしょうか?私達スタッフからも、ぜひそのアイデアお願いします!」







制作側からも熱い眼差しが向けられる。
実際、蒼さんの店も帽子も素晴らしい。
悩みの相談に乗ってもらったりと、とてもお世話にもなった。
その恩返しではないけれど、何か広めるきっかけになればとは思う。

ただ・・・・・・。







「もし、逢坂さんから言い難いのであれば、私達スタッフがまずは電話で伺いましょうか?」







それは無理だ。
なんてったってあの店には電話が無い。
僕が教えてもらった工房の番号も、同時に自宅の番号でもあるからかあまり公にはしていないらしい。







「僕が、直接伺ってみます。」







まだ決まってもいないのに盛り上がるみんなを見て、僕は期待と同時に少しの罪悪感を感じていた。
蒼さんはOKを出してくれるだろうか?
彼女自身がテレビを持たない人だ。
メディアに取り上げられるのを良く思わないかもしれない。
せっかく仲良くなれたのに、下手したらこれをきっかけに僕を嫌に思うようになるかもしれない。
あの時頭に浮かんだままに口にしてしまったけれど、それは間違いだったのか。

考えていても仕方がない。
今僕がやらなければならないこと、それは一つ。

蒼さんに会いにいこう。
あの店へ。




















「ソウゴ、いつの間にレディーをgetしていたのでしょうか?」

「壮五さんって、カッコイイし結構モテたのかな?ほら、大学の時とか!」

「一見距離置きそうで、ありゃ思い込んだらそーとーのめり込むタイプだな。」

「すげー!ヤマさん、なんで分かんの?」

「オッサンは人生経験が豊富なんだよ。な、大和さん。」

「胡散臭くてほぼ参考にはならなそうですが。」

「イチは相変わらず辛辣だなー。」





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