request〜依頼






「はい、ええ・・・え、本当ですか!?ハイっ!!ありがとうございます!こちらこそ是非よろしくお願いします。しかし・・・あぁそうですよね、分かりしました。方針等確認も兼ねて少々お待ち頂いても宜しいでしょうか・・・?分かりました。こちらから折り返しお返事させて頂きます!!」






マネージャーの一喜一憂するような会話が響く。
ここは小鳥遊芸能プロダクション。
ガチャ、と受話器を置いて約三秒。






「一織さん、お仕事です!」






マネージャーがやや緊張感のあるトーンで私に声をかけた。
私単独の仕事だろうか?






「それで、どんな仕事なんですか?」

「ハイ。今回はドラマの出演依頼です!」

「私にドラマ・・・?二階堂さんではなくてですか?」

「一織さん主演です!正確には、W主演なのですが・・・。」






W主演?
普段ドラマなど芝居の仕事は主に二階堂さん宛に入ってくる。アイナナ学園のように企画モノであれば私も出演経験はあるけれど、私個人ではこれが初めての依頼だ。
勿論、単独でのドラマ出演であろうとやれと言われれば私はやりこなす自信はあるし、何よりIDOLiSH7の発展、それが私の今一番の願い。そのために自分に出来ることがあるのなら、誰かみたいに私情でダダをこねたりせず喜んで引き受けるつもりだ。






「何をそんなに気にしているんですか?私なら大丈夫ですよ。」

「では早速。今回のドラマなんですけど・・・。」






マネージャーが言うに、今回の仕事はこうだ。

まず、今話題のテクノポップ女性アイドルユニット『テクノテクニカル』の知咲(ちさき)蒼とのW主演。それぞれ頭脳明晰、眉目秀麗なパーフェクト高校生の男女二人組が、迷宮入り必須の難事件を解決していくという、ライトなサスペンスコメディー。そして、主演の二人が今回のドラマのために限定ユニットを組み、ドラマ主題歌を歌うということ。






「俺、知ってる。ちさきち、同じクラス。いおりん、知ってる人で良かったな!」

「ちさきちってお前なぁ・・・。俺も知ってるよ、テクノテクニカル。通称テクテクだろ?俺、珍しく女性アイドルに興味持ったもん!それに、アイドル同士のドラマ限定ユニットって、前にもすごく流行ったよな。ほらあの、ユージとアキオの新春アミーゴって曲!」

「Oh!男性アイドルが好きなミツキがデスか?テクテク、ファンタスティックなガールズデース!まじ☆こなの映画エンディング、コラボして歌ってマシタ!」

「あーそうそう、他にファ〜ンタス〜ティコ〜♪なんて歌もあったな。このドラマ、かなり話題になるぞ?にしてもイチ・・・そんなあからさまに嫌そうな顔してどうした・・・?」

「確かに、いつもの一織くんらしくないですね。」

「分かった、一織その子に告白してフラれた事があるんだろ?」

「あ、あなた達と一緒にしないでください!私は決して嫌そうな顔などしていませんし、七瀬さんの言うような事実は全くもって無根です。いいですよ、マネージャー。承諾しました。役柄的にも私には持ってこいです。そのドラマ、喜んで引き受けましょう。」







社長からのゴーサインも得たマネージャーが、早速先方に連絡を入れた。
これでまた一つ、IDOLiSH7として私もその知名度や更なる人気獲得のための一仕事ができる。それは確かにテクノテクニカルの名も同時に広がる事になってはしまうけれど、これだけ構想の段階で既に話題性に欠けないであろう内容を、みすみす逃してしまうのは惜しい。
これで大きな波を引き寄せた後、そこからIDOLiSH7がその波に乗れるようまた新たに計画を立てればいいだけの話だ。

これまでのその局ドラマの傾向、同じ時間帯に放送されている他局の番組内容、これまでに発売された歴代のドラマ限定ユニットの楽曲やCDセールスの数、監督や他の共演者達の評判・・・。

調べて分析しなくてはいけないことは沢山ある。
私は賑わう事務所を後に自室へ戻り、パソコンを開いた。

電源を入れる瞬間。
この瞬間が、私はとても好きだった。
小さくうねるコンピュータの起動音。
微かに伝わる回り出したファンの振動。
一つずつ自分の中でスイッチが入っていく。
私の脳が目覚めていく瞬間。






何も怖がるものなどない。
このドラマ、絶対ヒットさせてみせよう。
パーフェクトな私の名にかけて。











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