「蒼さんと連絡が取れない!?」


無事に仕上がった歌詞。そしてそれに曲を付けてくれる蒼さん。制作の進行具合と具体的な今後の展開など、必要とされる打ち合わせはまだまだ山積みだ。そんな中、マネージャーから信じられない事実が伝えられる。そう、蒼さんと連絡が取れないと。


「ハイ・・・・・・他のお仕事は普通にこなされている様なのですが。ラビチャの方には、こんなメッセージが最後に送られてきて・・・・・・このメッセージ以降はこちらから送っても、既読が付かない状況です。曲を作ってくださる事には変わりないようなので、こちらとしてはもう少し様子を見ようかと思っているのですが・・・・・・。あの、壮五さん。何かご存知ではありませんか?」


マネージャーのスマホのラビチャには。


『少し、時間を下さい。曲は必ず仕上げます。また連絡します。壮五くんにありがとうと、よろしくお伝えください。』


要件のみ書かれたメッセージがひとつ。
一体どういう事なのだろう。何が起きてるのだろう。
自分にはそんなメッセージ来ていない。


「あ、スミマセン、私次の打ち合わせに向かう時間です!そういう訳で、今後何か分かったことがありましたら、教えて下さいね、壮五さん!!では、行ってきます!」


慌ただしくマネージャーは僕らMEZZO"の控え室を後にした。
それを待っていたかのように環が口を開く。


「そーちゃん、すげー、名指しだな!」

「なら、何故僕の所に直接メッセージをくれなかったんだろう・・・・・・?」

「さぁー。恥ずかしいんじゃね?」

「環くん。そんな子供みたいな人じゃないだろう、蒼さんは。きっと何か訳があるんだ。僕に言えなくて、マネージャーには言える訳が・・・・・・。」

「だーからー!そーちゃんが蒼っちを好きだってのが分かったから恥ずかしいんだって言ってんだろ!?そーちゃんの作った詩を読んだから!鈍感なんだよ、そーちゃんは!!」


ハッとした。
素直になったということは、ありのままの自分を隠さず伝えたということは。僕の気持ちを知った蒼さんは一体どう思ったのだろう?伝えることにいっぱいになりすきて、まるでもう一段落付いてしまったかのように僕は安心し切っていたんだ。

蒼さんから来たあのラビチャのメッセージ。
『気持ち、受け取ったよ。』というのはどういう意味なのだろうか。


「環くんに鈍感なんて言われるだなんて。だとしたら環くん?僕は大変なことをしてしまったのかな。何でこんなことに・・・・・・」

「そーちゃんは、別に、なんも悪い事してないだろ?」

「気持ちを伝えた事は、間違いだったのかな・・・・・・」

「蒼っちがそーゆー風に書けって言ったんだろ?そーちゃんの悪い癖。すぐ自分が悪いと思う。そーちゃんの気持ちは、もう蒼っちに伝わってんだろ?」

「うん、きっと伝わっている・・・・・・。」

「じゃあ、次にすることは?」

「聞きたい。蒼さんの気持ちを、僕も聞きたい。」

「よっしゃ、じゃあ行こーぜ!」

「えっ、一体何処に!!?」

「蒼っちのトコ!俺いい方法知ってんよ!」


収録が始まるまでの時間に、環くんに連れて行かれたのはRe:valeの所だった。どうやら同じ局で別の収録で来ていたらしい。そう言えば百さんはかなりの情報通だったことを思い出す。


「よっ、元気してる?二人共!」

「なぁももりん、知らねーの?曲作る仕事の響蒼って人、どこにいる?」

「環くん、そんな突然聞いても・・・・・・」

「あー、蒼さん?この前、俺達もお世話になったんだ!相変わらず元気してたよー。どうやら最近恋しちゃったみたいなんだよねー。それなりに付き合い長いけど、俺達がふざけて聞いても色恋なんて無関係って顔してたし、あんなピュアな一面初めて見たもんだからさー!もう可愛くって可愛くって!ちょっとからかい過ぎちゃった。」

「こら、百。それは内緒にしとく約束だったじゃないか。」

「ゆきりん、ももりん、それ、本当!!?」

「ふぅ・・・もう聞いちゃったなら、仕方ないね。本当だよ。だけど、秘密にしてあげなね?蒼も僕らと同じ、大勢の芸能関係者の中で仕事してるんだから。変な噂立てて迷惑にならないようにね。」


Re:valeの二人から聞いた話だと、あくまで連絡を断っているのは僕の事務所関係だけで、ほかの仕事はマネージャーが言うように普通にこなしているらしい。
それと、百さんが教えてくれた最近恋をしたという話。
そしていつものあの部屋にこもり、大切な曲が、作らなくてはならない曲があると必死になっていると言うことを聞いた。

僕はなんとなく、やっぱり自分が全ての原因のような気がしていても立ってもいられなくなり、早く収録が終われと願う自分勝手さを心の中に必死に閉じ込めて、収録が終わるとともに籠から放たれた鳥のように蒼さんの部屋へと走った。「放っておくと過激なそーちゃんは何するか心配だから」付いていくと駄々をこねる環くんを、お決まりの王様プリンで制しながら。

考えてみれば、あなたの話を聞いて僕はいつだって自分の喜びや驚きの感情だけで一杯で。でも、僕はあなたが望んだ方法でちゃんと伝えた。
僕も、ちゃんと話したから。

ありのままの蒼さんを、気持ちを聞かせてください。


今度はあなたの番です、蒼さん。


「蒼さんもMEZZO"の2人も、可愛いなー。気持ちは、ちゃんと言葉にして伝えないと分からないんだよ。ね、千?」

「フフッ、そうだね。百。」

「あーぁ、大丈夫かなぁ?蒼さん。真っ赤になって俺達に吐いちゃったみたいに、ちゃんと気持ち伝えられるといいんだけどなーぁ。」

「きっと大丈夫だよ。それより百、わざとバラしたね?」

「バレた?だってこんな役目、他の誰かにはさせられないでしょ?可愛い後輩と、可愛い作曲家の先輩のためだもん!」

「言えてる。」


気持ちは、伝えなくちゃ分からないんだ。
人の心の中は暗くて、他の誰かに照らしてもらわなければ「本当の事」なんて誰にも見えないのだから。


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