<毛利視点>



呼び出した喫茶店に姿を現した元ダブルスパートナーを非難めいた声で呼ぶ。


「つ〜き〜さ〜ん〜」


月光さんはすぐに俺に気づいたようで、真っ直ぐ俺の正面の席に来て座った。

顔色は全く変わらんけど、きっと今の俺を見て「面倒くさそうだな」と思っていそうや。


「お久しぶりですわ月光さん」

「先月ぶりだな」

「まぁそうですね」


お互いに飲み物を注文して、店員さんが離れたのを見送ってから、べしっ、と軽く机を叩いた。


「ところで月光さん、水くさいやないですか〜」

「何がだ」

「彼女さんおるんなら、なんで教えてくれんかったんです? 俺、月光さんが女の子とデートしてるの見たって、後輩から聞いたんですけど」


その後輩が遊園地で見かけたってことと、すでに別れたのも知っとるということは敢えて黙っとく。

月光さんは顔色ひとつ変えず「別れた」と言った。

まあ知っとるけど。
ここは初めて聞いたフリをしとく。


「えぇっ、なんで? 実はめっちゃ嫌な女やったとか?」

「違う」

「じゃ、なんで?」

「…………」


月光さん黙り。
店員さんが注文した飲み物を運んできた。
軽く会釈し、再び店員さんが去ってから口を開く。


「嫌いになった、とかやないんですか?」


店内のざわめきに掻き消えるか消えんかくらいの声で月光さんが言った言葉を、俺はなんとなく聞き取った。


「……嫌いになるはずがない」


聞き間違えやなければ、月光さんも元カノさんがまだ好きってことなんよな。
はてさて、状況がわからん。

俺は首を傾げる。


「突然、別れようと言われた」


別れるのに突然、ということはないやろう。
何かしらの理由や前触れはあるはず。


「月光さん、その前に何か言いました?」

「…………」


月光さんはその時のことを思い出そうとしているようで、暫し沈黙。



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