昼食が終わり、いくつか穏やかなアトラクションに乗って、最後に観覧車。

二人して同じ側に座ろうとしたら、ゴンドラがかなり傾いたので、結局向かいに座った。

ゆっくりと地上から離れていくゴンドラ。
人も建物も小さくなっていく。頂上に着く頃には見えなくなるだろう。


「ねぇツキ、少し屈んで」


ツキが屈んで、顔が私と同じくらいの高さになったのを確認して、外に目を向けた。


「今、同じ目線で世界を見てるよ」


いつもはツキの方が私より40cmほど高いところから世界を見ている。

視線を外からツキに戻したら、真っ直ぐにツキと目が合ってドキッとした。

前向きに屈んでもらっているから、顔が近い。


「楓」


名前を呼ばれて、後頭部を押さえられて素早く口づけられた。
私は慌てて後頭部に回された手をほどいて離れた。


「まだ、頂上じゃないんだけど」

「頂上でもすればいい」

「いや、他のゴンドラから見えるから」


そんなもの欲しそうな目で見られても……。


「見せつければいい」

「イヤイヤ、はずかしいし……」

「そうか」


アッサリ納得されたけど、頂上ではバッチリ唇を奪われました。


観覧車を降りて、お土産を買って、遊園地からの帰り道。
お土産の入った紙袋を持ってもらい、悪いなと思いつつも隣を歩く。


「ツキ、楽しかった?」

「ああ」


ツキが急に立ち止まる。
私も二歩ほど先で足を止めて振り返った。


「ツキ?」

「楓は、俺と一緒に来て楽しかったか?」

「え、うん。楽しかったよ」


ツキの聞き方に引っ掛かりを覚えた。


「どうしたの? そんな言い方して」


間が空く。よくあること。


「昼食の時」

「うん」

「『何でもない』と言っていたが、周りの目を気にしていたんじゃないのか」


気づいてたのか。



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